日本航空(JAL)の危機が一段と深まった。業績悪化に歯止めがかからない。政府の救済方針は決まったが、肝心の経営陣の影が薄い。もう後がないのだから全力を挙げて経営責任を果たせ。
東京・霞が関の国土交通省で記者会見した西松遥同社社長は二〇〇九年九月中間決算を終始厳しい表情で説明した。最終赤字は千三百億円強と過去最悪だった。一〇年三月期の業績見通しも発表しなかった。
経営危機は昨日今日に始まったことではないが、今回は深刻だ。とくに当面の資金繰りが緊急課題となっている。同社は政府につなぎ融資を要請している。
政府は十日に内閣府特命担当、財務、厚生労働、国土交通、官房長官の五大臣連名で「日本航空の再建のための方策」を決定済みだ。この方針に基づき日本政策投資銀行が近く融資を実行する。
また同社は「企業再生支援機構」に支援を要請しているが、同機構が再建計画を決定するのは来年一月以降になる見込みだ。
そこで私的整理の一手法である「事業再生ADR」を申請し、金融機関への債務返済の一時停止を求めることになった。これも当面の時間稼ぎの措置と言えよう。
一連の対策は鳩山内閣が推進している。同社がこの秋独自に作った再建計画は実効性に疑問があるとして白紙に戻された。
だが政府主導の救済には問題点が多い。なぜ日航だけを救済するのか。日本を代表する航空会社、離島の生命線、雇用問題などの説明はあるが国民の納得を得るにはもっと丁寧な説明が必要だ。
また政府首脳が早々と「日航はつぶさない」と表明した結果、社内の危機感を薄めた可能性がある。「親方日の丸」意識が復活しては再建はおぼつかない。
当面の救済に追われて、不採算空港・路線の開設など前政権で目立った政治と行政の関係見直しが脇に追いやられかねない。この問題こそ腰を据えてきちんと対処する必要がある。
経営陣は最後の力を振り絞って責任を果たすべきである。企業年金の減額は公的資金投入にあたって解決しておかなければならない最低条件だ。「不退転の覚悟」で取り組むことだ。政府の特別立法などに頼ってはいけない。
国民の視線は厳しい。この冬のボーナスゼロとつらい立場に置かれている社員・労働組合だが、一丸となって安全運航の徹底とコスト削減を推進してほしい。
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