オバマ米大統領が初めて来日し、鳩山由紀夫首相と会談した。日米安全保障条約改定五十年を来年に控えた今回の会談を、日米両国での政権交代を受けた、新しい同盟関係の出発点にすべきだ。
今回の首脳会談で特筆すべきは、二〇五〇年までに温室効果ガス排出量の80%を削減することや、「核のない世界」の実現を目指す共同声明を発表したことだ。
ブッシュ前政権は、地球温暖化防止や核軍縮に向けた国際的な取り組みに積極的ではなかった。
日米両国が地球的規模のこうした課題で協力する姿を見せられるようになったのも、日米両国での政権交代の成果と言っていい。
この好機を生かし、両国は地球環境や核軍縮に限らず、経済、エネルギー、食料、テロとの戦いなど、国際社会が抱える諸問題の解決に、他の国々とも手を携えて取り組む姿勢を示してほしい。
一方、懸案の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題は中心的な議題にはならなかった。
米側は米軍キャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部に県内移設する三年前の日米合意履行を迫ってきたが、民主党は先の衆院選で県外・国外移設の検討を掲げて戦ったため、深入りすれば会談決裂は避けられなかったためだ。
鳩山首相が合意履行を明言しないことをとらえ、国内外に「同盟の危機」との指摘があるが、政権交代に伴って前政権からの政策の総点検をするのは当然だ。米側も理解しており、危機を煽(あお)るのは、両国の国益を棄損する。
とはいえ、世界で最も危険とされる普天間飛行場の移設は早期決着が望ましいことに変わりない。
首脳会談では、閣僚級の作業グループを作ることで一致した。今後、協議を急ぎ、「最低でも県外移設」を期待する沖縄県民と両政府が折り合える着地点を見つけることが必要だ。鳩山首相の指導力が求められる場面もあるだろう。
両首脳は安保改定五十年の節目に当たる来年に向け、同盟関係を深化させるための共同作業を始めることでも一致した。
同盟の根幹である改定安保条約は二国間の安全保障だけでなく、経済的安定や福祉の充実などに向けた相互協力もうたっている。
地球的規模の課題で協力を進めるほど、同盟強化につながる。そんな二十一世紀にふさわしい「新しい同盟」の姿を、既成概念にとらわれない新しいキャンバスに描いてみてはどうだろうか。
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