近ごろ、よく耳にするカタカナ言葉に「メンテナンス・フリー」がある。面倒なお手入れ不要、という意味だろう。無精者にはことに魅力的に響く。何であれ、放っておいても機能維持できるならそれにこしたことはない▼さて今、博報堂生活総合研究所がしばらく前に発表した、ある調査結果をながめている。一九八八年から二〇〇八年まで十年ごとに三回、同一の質問で夫と妻の「家族」観を探った調査。かなりの変化が起きているようだ▼たとえば「意識して家族の絆(きずな)を強めるようなことをするほうがよい」と答えた割合。夫の場合、八八年37・3%が、九八年は47・3%となり、〇八年には56%にまで増加している。妻も似たような結果だ▼逆に「家族より自分」という意識を示すような回答は、この二十年で激減。つまりは「自分より家族」の傾向、しかも、努めて家族の機能を守っていこうとする意識が、どんどん強まっていることがうかがえる▼お手入れ不要なら、それが一番。だが考えてみれば、大事なものほどメンテナンス・フリーとはいかないものが多い。当たり前に維持されているように見える「自然」でも「平和」でも、人がいつも手をかけていないと危うい▼子どもたちよ! わざとらしく思えても「家族一緒に何かを」という父母の誘いをむげにしないで。それは、愛なんだ。あすは「家族の日」。