兆円単位の無駄減らしが求められるいま、この額ではまだ少ない。
会計検査院は国の2008年度決算の検査報告で、合計2364億円の税金の無駄遣いを挙げた。過去最多の07年度を8割も上回る新記録だ。件数は717件で前年度の981件を下回ったが、100億円を超す大きな案件が多かった。
それでも検査院の成果は1ケタ小さい。鳩山政権は公約に掲げた子ども手当などの財源探しに四苦八苦している。10年度予算は税収も落ち込み、95兆円を超す概算要求を少なくとも3兆円は削る必要がある。
厳しい財政状況を乗り切るためにも、検査院のようなお目付け役を一段と使いこなさねばならない。民主党ら与党はその人員や機能の強化に加え、検査院の独立性を高める制度改革を大いに進めるべきだ。
08年度報告では国、地方で横行する不正経理が目立った。架空取引で業者に代金を払い、後で別の物を納入させる「預け金」が代表例だが、契約前に納入して後で日付を操作するような新たな手口もあった。
補助金を元手に役所が公益法人に設ける基金の水膨れも分かった。
農林水産省が環境保全対策などの名目で設けた資金のうち7件、353億円が有効に使われていなかった。国土交通省所管の民間都市開発推進機構でも、業務が縮小したのに基金規模が減っていないとし、検査院が一部の国への返納を求めた。
補助金が有効に使われなくなったのに国に戻さず、既得権のように抱え込むのは納税者への裏切りだ。民主党は税金の無駄排除を掲げるが、それならば不正やごまかしを許さない体制を強めるべきではないか。
民主党は8月の衆院選前に作った政策集で、検査内容の公表を広げる会計検査院法の改正や、米国にならって不適切な契約の改善を政府に勧告できる「行政監視・評価院」を国会に置く考えを盛り込んだ。
政権交代は予算の配分を変える好機だ。無駄を探す人材や知識が集まる検査院を活用しない手はないし、大胆な組織改革もためらうべきではない。決算が監査の結果と同時に出るのが民間企業の常識だ。検査報告が予算編成に生きるよう、公表時期の前倒しにも取り組んでほしい。