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11月12日付 よみうり寸評

 平成14年(2002年)の大晦日(おおみそか)に森繁久弥さんは旅先の沖縄で倒れ、そこの病院で年越しをした◆89歳で心筋梗塞(こうそく)だったが、年明けの1月6日には集中治療室を出た。めざましく回復し、薄紙をはがすようにではなく、まるでスケッチブックをはがすような回復などといわれたほどだった◆そのとき、個室が空いていなくて、一般病棟に2日ばかりいたことがある。その夜、病室から患者たちの歌声が流れた。消灯時間を過ぎていたから忍んだ声だが、同室の10人ほどが「知床旅情」を歌っている◆全員がビブラートつきの〈森繁節〉。歌の中心は1週間前には死にかけていた森繁さんだ。歌は「お山の大将」「琵琶湖周航の歌」「夕焼け小焼け」と続いた◆この情景、〈大遺言書〉(語り 森繁久弥、文 久世光彦)にある。時は流れて96歳になっていた森繁さん、今度は、さすがにめざましい回復とはいかなかった◆でも――別れの日は来た 羅臼の 村にも 君は出てゆく 峠をこえて……の歌声はいつまでも消えない。

2009年11月12日13時51分  読売新聞)
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