HTTP/1.1 200 OK Date: Thu, 12 Nov 2009 20:16:38 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:市橋容疑者逮捕 市民の協力あってこそ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

市橋容疑者逮捕 市民の協力あってこそ

2009年11月12日

 事件発生から二年七カ月もたちながら市橋達也容疑者(30)を逮捕できたのは市民の協力があったからだ。初動捜査がしっかりしていれば、逃亡はあり得なかった。警察はあらためて反省すべきだ。

 アカデミー賞受賞作の映画「羊たちの沈黙」で連続殺人犯のレクター博士は切り取った監視係の顔の皮膚をマスクのようにかぶり、捜索の包囲網をくぐり抜けたが、整形で顔を変えた市橋容疑者は逃げ切れなかった。

 二〇〇七年三月に千葉県市川市のマンションで英会話講師の英国人女性の遺体が見つかった。部屋の住人だった市橋容疑者は警察官から事情を聴かれようとしたときにマンションから走り去った。

 逮捕で女性の遺族の無念さはいくらかは慰められよう。「出てきてほしい」と訴えていた容疑者の両親は「ほっとした」という。

 一般市民まで安堵(あんど)感が広がるのは、映画や小説とは異なり、容疑者が逃げ切れなかった現実を目の当たりにしたからではないか。逮捕が市民の情報提供や通報によってとなれば、なおのことだ。

 直接のきっかけはフェリー会社社員の通報だが、鼻の整形手術を施した名古屋市内の病院が容疑者と感づき、現在の顔写真や情報を警察に提供した効果が大きい。

 別人といえるほどの整形後の顔もこれほど知れ渡っては逃げ切れまい。警察には千件の情報が寄せられたという。市民協力の連動なくして容疑者逮捕はなかった。

 整形は必ずしも逃亡を成功させるものではない。一九七七年のダッカ日航機ハイジャック事件での超法規的措置で釈放され、日本赤軍メンバーとなった男は八八年、整形手術を受けていたマニラ市内の病院に通う途中で捕まった。

 八二年に松山市でホステスを殺害した女は整形を繰り返して逃走したが、時効直前に逮捕された。事件では整形手術した病院が女に懸賞金をかけて話題になった。贖罪(しょくざい)的な意味もあったのだろう。

 市橋容疑者の場合、最初に整形手術した医療機関が通報していたなら、逃亡の展開は違っていたと思われる。英国人女性が死亡した経緯とともに、逃亡生活の実態も解明してほしい。

 逮捕で最もほっとしたのは千葉県警かもしれない。警察官の面前で逃げられたからだ。二度と初動の不手際を犯してはならない。

 今後も警察が市民の協力をつなぎとめていくには、警察側の積極的情報提供と、小さな事件でも丁寧に対応する姿勢が不可欠だ。

 

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