HTTP/1.1 200 OK Date: Fri, 13 Nov 2009 03:16:46 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:囲碁のことを「烏鷺(うろ)の争い」という。これは碁石の黒、…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月13日

 囲碁のことを「烏鷺(うろ)の争い」という。これは碁石の黒、白をカラスと白サギに見立てた洒落(しゃれ)たいい方だ▼ゲームの本質にかかわる異称なら、やはり「手談」だろう。一手一手のやりとりを言葉のやりとり、談議と見る呼び名である。中山典之六段も海外での指導碁の経験をふまえて書いている。「まことに、碁は、それ自体が一つの言語であると思う」(『囲碁の世界』)▼随筆で、二人が句をつけ合う「両吟連句」のようだ、と書いたのは詩人の那珂太郎さん。なるほどと思うが、観(み)る者の多いプロの対局なら、碁盤を舞台に演じられる「二人芝居」とも言えないだろうか。転変する模様は、筋書きの起伏を思わせる▼昨日、長野県松本市での第一局で第三十五期天元戦五番勝負が始まった。目下四冠の張栩(ちょうう)天元に山下敬吾棋聖が挑戦するのだから、まさに「役者がそろった」の感。第一局前夜、つかの間、手談ならぬ“口談”の機会があったが、実に穏やかなお二人であった▼ところが、翌日の手合は、役者が舞台に登場するや即斬(き)り合いを始めたような激しい展開に。互いに石の殺し合いを図る壮絶な戦いのまま終局まで突き進み、挑戦者が先勝した。ひと口に「囲碁とは陣地の取り合い」というが、この常套句(じょうとうく)もうなだれていよう▼どうもこのお芝居、サスペンスかつアクションものらしい。二幕目に乞(こ)うご期待である。

 

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