HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Tue, 10 Nov 2009 22:17:35 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:冷戦終結20年 新たな壁 見据える時だ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

冷戦終結20年 新たな壁 見据える時だ

2009年11月10日

 ベルリンの壁が崩壊して二十年を迎えた。東西冷戦を終結させた時代の熱気は絶えて久しいが、現在の地球規模の問題の多くはその冷戦終結に直結している。新たな壁を見据える好機としたい。

 ベルリンの壁崩壊は、一九八九年に吹き荒れた東欧革命の象徴だ。八〇年代に始まったポーランド自主管理労組・連帯の民主化運動は八九年夏に共産政権崩壊となって結実し、秋以降のチェコスロバキアのビロード革命、ハンガリー、ブルガリア民主化を経て、年末のルーマニア流血革命まで、独裁体制瓦解のドミノ現象を起こした。

 二十年の今年、象徴的な言葉は「二十一世紀の壁」だろう。先週訪米したメルケル独首相が米連邦議会で演説した際に使用し、ベルリンの式典に出席したクリントン米国務長官も言及、国際社会にその克服を呼び掛けた。

 核兵器拡散、民族紛争、金融・経済危機、イスラム過激派テロ、環境・エネルギー問題など、新たな地球規模の脅威は、冷戦後相次いで顕在化している。

 北朝鮮の核開発はルーマニアのチャウシェスク体制の崩壊を目の当たりにして本格化している。冷戦下封印されていた民族紛争は世界各地で国家と過激な民族・宗教組織間の非対称の戦いを生んだ。

 グローバル化した世界経済は、際限のない市場原理主義の果てに未曾有の金融危機をもたらした。環境・エネルギー問題では資源の枯渇という深刻な事態に直面している。

 国際社会はいずれの問題にも有効な対処法を欠いたままだ。

 米国テキサス州の軍基地で発生した米軍医による銃乱射事件は、両親がパレスチナ出身のアラブ系米国人が犯人だった。テロ防止用ではあれ、ガザ地区を覆うコンクリート壁は、誰もが見たくない壁の一例だろう。

 冷戦下、東ベルリン市民の西側流出を食い止めるため東独政府が築いた防護柵は当初、鉄条網だった。その後造られた壁は徐々に強化され、崩壊時には高さ四メートル近い醜い塊と化していた。今も路上には手術痕のようにうねる壁の跡が残る。

 新たな壁には、規模の大きさもあり見えにくい性格のものが多い。東欧革命の多くが体制の内部崩壊に起因したこと、国家建設は崩壊の何倍ものエネルギーを要すること。新たな壁がまだ越えられるうちに、東欧革命の貴重な教訓にあらためて思いを致したい。

 

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