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社説2 「象徴天皇」を形にした20年(11/11)

 天皇陛下が即位から20年を迎え、あす、政府、民間主催でそれぞれの記念式典が開かれる。

 平成の時代の流れと重ね合わせれば、「つねに国民とともにあり、国と国民のためにつくす」という新しい天皇像が定着しつつあることに誰もが気づくだろう。天皇陛下と、陛下を支えた皇后陛下の歩みを振り返ると、一貫した姿勢に強い意志を見る思いがする。

 天皇陛下は今の憲法の下で即位した初の天皇だ。憲法第1条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する国民の総意に基づく」と定めている。しかし「象徴天皇とは何か」に用意された答えはない。

 天皇陛下はことし4月、「象徴とはどうあるべきかということはいつも私の念頭を離れず、その望ましいあり方を求めて今日に至っている」と述べられている。

 この言葉に天皇陛下の20年が凝縮している。

 平成は「内平(たいら)かに外成る」「地平かに天成る」という中国古典の文言から、内外、天地が平和であれとの思いを込めてつけられた元号だ。しかし、この20年が平らかだったとは、とても言えない。

 バブルの絶頂と崩壊、その後の「失われた10年」があった。雲仙普賢岳噴火、阪神大震災などの災害もあった。鳩山由紀夫首相は平成で15人めの首相だ。政治が不安定だった証しである。少子高齢化は進み、昨年はリーマン・ショックが襲った。

 こうした中、「国民が何を期待しているか」を思い続ける天皇陛下の姿勢にはブレがなかった。被災地や福祉施設でひざをついて人々に声をかけられることに、いま違和感を持つ人はほとんどないだろう。しかし、天皇がひざをつく姿など想像できない時代があったのである。

 戦没者の慰霊を通じ平和への思いを示すことや即位後32カ国に上る外国訪問なども含め、陛下は積極的な行動によって象徴天皇像を作りあげてこられた。その像は国民の期待に合致していると言っていいだろう。

 しかし、そのため公務の負担が重くなりすぎたのは否めない。陛下は来月23日に76歳になる。即位20年を負担軽減のきっかけにしてほしい。

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