HTTP/1.0 200 OK Server: Apache/2 Content-Length: 17532 Content-Type: text/html ETag: "19e61b-447c-6296d940" Cache-Control: max-age=5 Expires: Wed, 11 Nov 2009 02:21:11 GMT Date: Wed, 11 Nov 2009 02:21:06 GMT Connection: close
アサヒ・コム プレミアムなら過去の朝日新聞天声人語が最大3か月分ご覧になれます。(詳しくはこちら)
沖縄県石川市(現うるま市)は、沖縄戦後の日本人収容所から発した街だった。ある日収容者の前に男が現れ、「残った者が元気でないと死んだ人が浮かばれぬ。命(ヌチ)のお祝いをしよう」と踊り始めた逸話が残る。『沖縄言葉(ウチナーグチ)ちょっといい話』(藤木勇人著、双葉社)で知った▼だが、命のリレーはままならず、彼らの子どもらを再び悲劇が襲う。市立宮森小に米戦闘機が落ち、児童11人を含む17人が死亡、200人超が負傷して50年になる▼2年生だった校長の平良(たいら)嘉男さん(58)は節目の今年、遺品などを集めた巡回展を始めた。「生活に追われ基地に耐えることが日常になっていないかと、県民に問いたい」と語る▼戦争で踏みにじられた後も、この島は異国の戦に酷使されてきた。いや、基地は日本の平和のためだという反論があろう。しかし、度重なる墜落事故や性犯罪で流された血涙は、同盟のコストといった乾いた言葉ではくくれない▼普天間飛行場の問題も積年の我慢と怒りの先にある。県外移設を訴えて政権を取った鳩山首相に、地元の期待が膨らむのは当然だ。平良さんも、県内移設に反対する大会に出た。「県外だ国外だ、と言うのはつらいのです。この苦しみを誰かに強いることになる」▼ベルリンの壁が崩れて20年というのに、極東では冷戦が尾を引き、沖縄の「役割」もなかなか終わらない。とはいえ、外国の基地がいくつもあるのは、主権国家として異常な姿であろう。日米ともせっかくの新政権である。この際、お互い腰を据えて同盟の明日を考えたい。