HTTP/1.0 200 OK Server: Apache Content-Length: 59477 Content-Type: text/html ETag: "add32-178d-87dc5f00" Expires: Mon, 09 Nov 2009 23:21:06 GMT Cache-Control: max-age=0, no-cache Pragma: no-cache Date: Mon, 09 Nov 2009 23:21:06 GMT Connection: close 冷戦終結20年 世界の新秩序をどう築くか : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)



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冷戦終結20年 世界の新秩序をどう築くか(11月10日付・読売社説)

 「ベルリンの壁」が崩れて、9日で20年を迎えた。壁を崩した力はドイツの分断を解消し、ソ連も崩壊させた。米ソ冷戦構造は葬り去られた。

 世界はその後、試行錯誤を繰り返してきたが、冷戦後の新秩序は(いま)だしである。

 1989年の壁崩壊はまず、市場経済を東欧など旧共産圏に広げた。人、物、資金が国境を超えて動くグローバル化が進んだ。

 しかし、その負の側面としての行き過ぎた自由化が、昨年の世界的金融危機をもたらした。

 冷戦直後には、抑えられていた民族意識が覚醒(かくせい)し、バルカン半島では民族間の殺りくが繰り返された。欧米諸国は、国家主権の尊重より人道問題の解決が勝るとして軍事介入の道を選んだ。

 2001年の米同時テロは、国際テロの脅威を見せつけた。それは、当時のブッシュ米大統領に、世界を敵味方に二分する対決路線を選ばせた。「文明の衝突」を象徴するような出来事だった。

 オバマ米大統領が今、「イスラムとの対話」を呼びかけているのも、前任者の(つまず)きを踏まえて軌道修正を図っているのだろう。

 一方、89年6月、中国では天安門事件が起き、民主化要求は弾圧された。中国はその後も、一党独裁体制を堅持しつつ、市場経済のもとで著しい経済成長を遂げた。だが、貧富の格差や少数民族問題など矛盾も表面化している。

 北朝鮮は核ミサイル開発を続行し、東アジアの最大の不安定要因となっている。東欧諸国の変貌(へんぼう)ぶりとは対照的な冷戦の遺制と言えるだろう。

 日本では、冷戦構造の崩壊後、自民党と対峙(たいじ)してきた旧社会党が姿を消し、自民党も今年、政権の座から転落した。この間、何度も日本の新たな国際貢献策が問われながら、依然として国際平和協力は、不十分なままだ。

 壁崩壊の翌年に統一を果たしたドイツは、経済破綻(はたん)した旧東独地域を抱え、疲弊した。だが、欧州統合の牽引(けんいん)車としての役割を放棄せず、アフガニスタンへの派兵など国際貢献も強化している。

 欧州にはかつて、巨大ドイツの出現を危惧(きぐ)する声があったが、今はそれも聞こえて来ない。

 ドイツ国内では、なかなか縮まらない東西の経済格差や終わりのない旧東独再建事業に不満の声も出ているという。

 だが、壁が崩れたとき、多くの人が「よりよい方向へ世界が動いた」と確信した。時計の針を巻き戻してはならない。

2009年11月10日01時17分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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