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春秋(11/10)

 ロシアでスターリンの孫が新聞社を相手に訴訟を起こした。第2次世界大戦中、捕虜のポーランド人将校がソ連軍に大量虐殺された「カティンの森」事件。スターリンが殺害を命じたとの報道で、祖父の名誉が傷つけられたというのだ。

▼モスクワの裁判所は孫の訴えを退けたが、ロシアではスターリンを偶像視する傾向がいまだに根強い。ロシア史上最も偉大な人物は誰か。ロシアのテレビ局が昨年実施した人気投票でスターリンは3位に。大粛清、独裁の恐怖よりも、大戦に勝ち共産圏の帝国を築いた力を評価する。過去の栄光への郷愁だろうか。

▼「ソ連は犯罪的な体制だった」。ポーランドのアンジェイ・ワイダ監督が本紙に語っていた。その残酷な真実を描いた映画「カティンの森」が12月に日本で公開される。事件で永遠に引き裂かれた家族。ナチスの犯行だとデマを続けたソ連。戦後もソ連の仕業と言えなかった日々。歴史の悲劇がひしひしと伝わる。

▼監督自身も、この事件で父を失った。ソ連がようやく真相を認め、公式に謝罪したのは冷戦終結後の1990年だった。冷戦終結を象徴したベルリンの壁の崩壊から20年を経た今も、スターリンの亡霊がロシアをさまよっている。歴史の清算は難しい。ワイダ監督のこの映画、ロシアで商業公開の予定はまだない。

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