政府の地方分権改革推進委員会が税財政制度の見直しを柱とする第4次勧告をまとめた。2007年4月に発足した同委員会は来年3月末の任期を前にこれで活動を終える。
第4次勧告は国の地方向け補助金の整理や地方税制の改革、国の直轄事業に伴う地方負担金の廃止などを求めている。消費税の増税を封印している鳩山政権に配慮したためか、国から地方への税源移譲を「中長期の課題」と先送りしており、全体に踏み込み不足な内容になった。
それでも4次にわたる勧告で改革すべき当面の課題は出そろった。あとは政府の判断次第である。自民党政権時代は改革が停滞しただけに、鳩山政権には大いに期待したい。
しかし、先週まとまった自治体の仕事を縛る「義務付け」の見直し案をみる限り、お寒い内容だ。地方が早期改善を求めている約100項目のうち、勧告通りに見直すのは4分の1にすぎない。文部科学省に至ってはほぼゼロ回答である。
保育所の施設基準のように勧告内容とかけ離れた項目も多い。厚生労働省は国の基準に従わなければ補助金を減らす姿勢をみせている。
これでは民主党がマニフェスト(政権公約)で掲げた「地域主権改革」とは何なのか、疑問を抱かざるを得ない。全国知事会も「地方を信頼せず、国の管理下に置く姿勢がかなり残っている」と反発している。
原口一博総務相は「あくまで改革の第1弾」と説明している。分権委が義務付けの見直しを求めた項目は全体で約900あり、その大半は手つかずのままだ。国道や1級河川の建設や管理権限の都道府県への移管、宅地開発の許可など約360事務の市町村への移譲なども、まだ実現の見通しが立っていない。
鳩山政権は11年度に地方向けの「ひも付き補助金」をなくし、使い道が自由な一括交付金に変える方針だ。国が権限を握り、基準を押しつけたままでは、交付金になっても地方の裁量の余地は広がらない。
政府は今後、分権推進の新たな組織を立ち上げるというが、いまだに改革の全体像やその工程表を示していない。分権委が残した一連の勧告は、政府が実現すべき最低限の水準と肝に銘じるべきだろう。