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世界経済―新たな不均衡に警戒を

 大恐慌の二の舞いを避けようと、主な国々や地域の首脳たちがワシントンのG20サミットに結集してから、もうじき1年になる。協調は成果を上げ、世界経済は危機のどん底から回復への道が見えてきた。

 半面、雇用や生産の縮小は深刻で、危機の出口はなお遠い。先週末、英国で開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議が、経済の回復が確実になるまで財政・金融政策で支え続けることに合意したのは、妥当な判断といえる。

 世界経済は全体としてなお集中治療室から出られない。金融危機の震源・米国は7〜9月期の成長率が5四半期ぶりにプラスになったが、政策による底上げ効果がまだまだ大きい。

 米国の10月の失業率は10%を突破した。大手ノンバンクや地方銀行の破綻(はたん)がやまず、商業用不動産向け融資の不良債権化が懸念されている。この事態に、オバマ政権が追加の景気対策の検討を表明したのも当然だ。

 欧州のユーロ圏16カ国も今年下半期はプラス成長を見込むが、回復の足取りは弱々しい。失業率はやはり10%突破が避けられそうにない。

 その半面、中国は7〜9月期に8.9%の成長を達成した。世界銀行の推計によれば、中国が今年は8.4%成長を確保し、日米欧の需要減の分の4分の3を補うという、すばらしい勢いを保っている。

 中国に象徴される新興国の発展は世界を危機から救い出す力ともなっているのだが、手放しでは喜べない要素がある。世界経済の新たな不均衡の芽も生まれているということだ。

 先進国ではデフレや不況の圧力の下で超金融緩和が続いているが、これが巨額なマネーの流れとなって、新興国の株式や不動産の市場でバブルを生みかねない。現に中国では、膨張した融資や海外マネーが株式や不動産の相場を押し上げ、行き過ぎと反動を警戒する声がくすぶっている。

 過剰な消費と借金がある一方、貯蓄や生産が多すぎるという不均衡は、世界危機の背景要因になった。その不均衡を是正しつつ、世界経済の新たな不均衡を引き起こさないための協調の仕組みをどう築くか。会議の焦点のひとつが、そのことだった。

 結局、1年後をめどに、枠組みを段階的につくっていくことになった。各国・地域が経済運営の方針を示し、相互に監視・協議して世界規模でのバランス確保を目指すというのだ。

 だが、景気対策としての財政出動が巨額の赤字をもたらすにつれ、先進国は金融緩和への依存をなかなかやめられなくなる可能性もある。

 不均衡の種をいつまでもまき散らさないためには、先進国が危機から早く立ち直るよう全力を注ぐしかない。G20の協調と各国にとって試練が続く。

婚外子差別―子どもの権利は平等だ

 法的に結婚している男女から生まれた子どもは「婚内子」、そうでない子どもは「婚外子」と呼ばれる。遺言を残さずに親が亡くなり相続するとき、婚外子の相続分は婚内子の半分とする。民法はそのように定める。

 婚内子にせよ、婚外子にせよ、子供が選んだ結果ではない。生まれたときから子どもは一人の人間として尊重され、法の下で平等に扱われねばならないはずだ。にもかかわらず、不合理な規定が長い間、生き残ってきた。

 国連からは何度も撤廃を勧告されてきた。それにもかかわらず、こんな差別が法律に残っていることは法治の先進国としていばれることではない。廃止の議論が続いてきたのも当然だ。

 ところが国民は慎重なようだ。3年前の内閣府の世論調査では、現行維持41%▼差別撤廃25%▼どちらともいえない31%、という結果が出た。

 厚生労働省によると、出生に占める婚外子の割合は、英仏では40%を超え、米国もそれに近い。家族の多様化が進み、事実婚が普通のことになっているといった事情が大きい。

 一方、日本はわずか2%程度。社会の結婚観、家族観の違いが根底にあるから単純な比較はできない。しかし、だからといって法律上の差別をいつまでも残したままでいいのだろうか。

 法務大臣の諮問機関である法制審議会は96年、差別の撤廃を盛り込んだ民法の改正案を答申した。野党時代の民主党も差別撤廃の法案を提出した。世論の動向があったとはいえ、時の政権がこうした動きに応えてこなかった責任は大きい。

 合憲の判断を続けてきた最高裁の姿勢も問われる。最高裁大法廷は95年、次のような判断を示した。法律婚主義のもとで婚内子の立場を尊重するとともに、婚外子にも一定の相続分を認めて保護をはかるものだから、婚外子の相続での扱いは著しく不合理とはいえない。

 10人の裁判官によるこの多数意見に対し、5人の裁判官は「法の下の平等を保障する憲法に反している」として明確に違憲を主張した。

 少数意見の違憲論の方に説得力を感じる。その後も最高裁は、婚外子の相続差別を争う裁判で合憲の判断を変えていないが、違憲とする反対意見もまた絶えない。

 法律で婚外子を差別することは、婚外子に対する偏見を助長する温床にもなってきた。そうした事態を救済し、平等を実現することも司法の大切な役割ではないのか。最高裁は時代の変化に応じて判例を変更することをためらうべきではない。

 鳩山政権の千葉景子法相は、この差別規定の撤廃に前向きな姿勢を示している。早急に実現に向けた努力を始めてほしい。

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