HTTP/1.1 200 OK Date: Sun, 08 Nov 2009 22:17:40 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:葉がすっかり落ちて、赤く熟した実を梢(こずえ)にたわわにつ…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月8日

 葉がすっかり落ちて、赤く熟した実を梢(こずえ)にたわわにつけた柿の木をよく見かけるようになった。きのうは立冬。実をついばみに来たヒヨドリのピィーヨという甲高い鳴き声は、冬に向かう季節のうつろいを感じさせる▼<よろよろと棹(さを)がのぼりて柿挟む>(高浜虚子)。実を取った経験のある人は、取れそうで取れないもどかしさを感じたことがあるはずだ。桃や梨(なし)よりも句に取り上げられることが多いのは、より身近な果物ということなのだろう▼「柿が赤くなれば医者が青くなる」といわれるほど栄養価も高く、レモンやイチゴに負けない量のビタミンCが含まれる。原産地は中国。日本では平安時代に編纂(へんさん)された『延喜式(えんぎしき)』に干し柿や熟柿の記述が見られる▼先日、訪ねた農家の軒先に、たくさんの干し柿が吊(つる)されていて、秋の日差しを浴びてオレンジに光っていた。生ではとても食べられない渋柿は、天日に干すことで渋味が抜け、甘柿より甘くなる。自然の妙を感じてしまう▼かつての駄菓子の甘さの基準は干し柿の甘さだったという。江戸後期になるまで砂糖は庶民には高根の花で、甘い食べ物の代表が干し柿だったからだろうか▼砂糖や油を大量に使った刺激の強い菓子がCMを通じて氾濫(はんらん)する時代、柿のように地味な果物はそれほど人気はないらしい。二日酔い防止にも効果があるというのに残念なことだ。

 

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