地方分権改革推進委員会の求めに応じ厚生労働省は、保育所設置基準を待機児童の多い都市部に限り一部緩和する考えを示した。だが、暫定措置にすぎない。少子化対策も地方にもっと任せたい。
分権委は、職員配置数や保育室面積などを定めた厚労省の設置基準について、全国一律の基準では各自治体が地域事情に応じた施策ができないと指摘。地方への権限移譲を求めていた。
厚労省は、国の基準は原則維持とした。ただ、待機児童対策として都市部に限り、基準面積を自治体判断に委ねることを認めた。
同基準は乳幼児一人当たりに必要な保育室などの面積が定められている。高地価の都市部では、これが保育所整備のネックとなっている。基準緩和で、認可保育所の受け入れ定員枠が広がり、同時に保育所もつくりやすくなる。
「すぐにも預けて働きたい」親にとって、待機児童解消を図るためのこの判断は歓迎できる。
だが、措置は時限的なもので、国の基準維持はそのまま。地域事情に合った保育所整備は、もっと自治体に任せてもいい。
さらに設置基準を地方に任せるだけでは、保育所は増えない。低い給与など待遇の悪さから保育士が足りず、待遇改善し魅力ある職場にする必要がある。
日本の設置基準は欧州各国に比べて低い。その基準をさらに緩和すれば、子供の詰め込みなどで保育の質が下がる懸念もある。自治体が地方の事情に合わせた基準をつくる以上、保育士を確保し質を保ちながら保育所整備を進める責任を負うべきだ。
一方、自治体は財源問題を抱える。公立保育所の運営費など国から地方に渡っていた財源が二〇〇四年度から、一般財源化された。財政状況が厳しいおり、他の施策を優先させ保育所整備に財源を回さない自治体もあるだろう。
政府には「子ども手当」の財源の一部を自治体に負担させる案もあり、さらに保育所整備の財源が減るとの不満が出ている。分権には財源移譲もセット。子ども手当のために、地方が求める施策ができないのでは本末転倒だ。地方の意欲を削ぐべきではない。
待機児童がいる都市部と違い、少子化で保育所が定員割れしている地方もある。地域の事情をよく知るのは自治体だ。地方に権限と財源を委ね、地方がそれを最大限生かせるように国は支援に取り組むべきだ。
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