HTTP/1.1 200 OK Date: Sat, 07 Nov 2009 03:16:53 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』という米映画の佳作に、…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月7日

 『セント・オブ・ウーマン 夢の香り』という米映画の佳作に、一つ、記憶に残る台詞(せりふ)がある▼筋書きは措(お)くが、名優アル・パチーノ演じる盲目の退役軍人が、旅の案内役になった若者と言い合いになる場面で拳銃を構えてこう言うのだ。「議論では俺(おれ)に勝てっこない。こっちは銃を持ってるんだから」▼また、米国で銃の乱射事件が起きた。陸軍基地で、イラクやアフガニスタンへの派遣準備中の兵士ら十三人が死亡、多数の負傷者が出た。銃撃犯は現役の少佐。イラクなどからの帰還兵の心のケアを担当していた基地の精神科医だった▼報道によれば、この少佐は自身のイラク派遣が決まったことに強い不満を抱いていた。米軍はイラクやアフガンから撤退すべきだとして派兵支持の同僚たちとしばしば口論もしていたという▼あの退役軍人の台詞の通りかもしれない。「銃」は、対話や議論といった、まどろっこしい「言葉」のやりとりなど吹き飛ばしてしまう。この男も、言葉ではどうにもできない現実を前に、そんな暴力の魔に捕らえられたのか▼「米国民が日々、戦場で命を落としている時に自国基地で米兵が銃撃されるとはおぞましい」。オバマ大統領はそう語った。ただ、まさにその米国が正義と信じる戦争自体に、「言葉」でなく「銃」で、一足飛びに物事を“解決”しようとする図式は重なってもいる。

 

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