政治献金疑惑をめぐる鳩山首相の答弁は逃げ腰だ。巨額なカネを虚偽記載した真相や背景は何か。東京地検の捜査に任せず、自ら国会の場で積極的に語らないと、新政権への不信が募りかねない。
首相の献金疑惑で噴き出したのは、政治資金の管理があまりにずさんなことだ。まず、二〇〇五年から〇八年にかけて、計九十二人から受けた約二千二百万円の個人献金が政治資金収支報告書に虚偽記載されていた。身に覚えのない人ばかりか、亡くなった人の名前まで含まれていた。
もう一つは、名前を記載する必要のない五万円以下の献金計約一億八千万円についてだ。その大半も小口を装った“偽装献金”だった疑いが持たれている。両方を合わせると、約二億円にものぼる巨額さだ。
原資には首相の個人資産が流用され、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」が管理する首相の口座から元会計責任者が引き出していたという。「私のお金を借用すると理解して(指示書に)署名したのは事実だ」と、首相自身が認めている。
しかし、衆院予算委員会での野党の追及に対し、首相は「東京地検の捜査で全容が解明されると思う」などと繰り返すにとどまり、自ら真相を明らかにする姿勢は乏しかった。答弁が逃げ腰だと批判されてもやむを得まい。
とくに、政治家本人が資金管理団体に献金できるのは、上限が年間一千万円と量的制限が定められている。首相は「一千万円までは寄付、超えた分は貸し出しと理解していた」と弁明しているが、多額なカネの扱いが、これほど不明朗でいいはずがない。
貸付金ならば、なぜ報告書にそう記載しなかったのか。虚偽記載したのはなぜなのか。国民にはふに落ちない話だろう。政界でも大資産家と知られる首相だ。自分のポケットマネーを政治に使っただけという意識なのだろうか。
共同通信の直近の世論調査では、内閣支持率は61%と政権発足時より約10ポイント下落している。献金疑惑について、首相の説明に「納得できない」との回答が68%にのぼっていることを考えてほしい。
国会での審議のほかに、政治倫理審査会などの場で、首相はもっと自ら進んで説明を尽くしたらどうか。国会の自浄機能を国民に示す機会でもあろう。もやもやとした疑念が晴れないと、政権不信をも呼び起こす。
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