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春秋(11/6)

 ゴジラとモーツァルト。何だか妙な取り合わせだが、ニューヨーク・ヤンキースの松井秀喜選手は小学生のころ、自宅でピアノのレッスンを受けていたという。いつもクラシックを聴いて眠り、今もモーツァルトが大好きなのだそうだ。

▼鍵盤をたたくよりもバットの振りに鋭い冴(さ)えをみせるようになった少年はやがて巨人軍に入り、栄光の道を歩む。普通ならそこで満足するに違いない。なのにあえて米大リーグに挑み、しかも名門球団に身を置いた決断は記憶に新しい。「行ってよかったな、と言われるように頑張る」とは移籍するときの言葉だ。

▼ほんとうに「行ってよかった」のだと祝福したい。夢を追いかけ、いくたびか訪れた危機を乗り越えた不屈の人がワールドシリーズの最優秀選手(MVP)に選ばれた。日本人で初めての快挙である。球団のシリーズ制覇を決めた試合で爆発させた3安打6打点は、渡米から7年間の労苦に咲いた大輪の花だろう。

▼骨折が癒えず、右手だけのキャッチボールが日課だったころもモーツァルトに慰められたというゴジラだ。幼いころから天才と呼ばれながら、最上の場を求めて欧州を経巡った作曲家の思いに自身の夢が重なるのだろうか。ここではなく、もっと遠くへ――。縮みがちなニッポン人を勇気づける交響曲が聞こえる。

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