HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Thu, 05 Nov 2009 03:16:47 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:たばこ値上げ 税制は時代とともに:社説・コラム(TOKYO Web)
東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

たばこ値上げ 税制は時代とともに

2009年11月5日

 厚生労働省がたばこ税増税を打ち出した。値上げには「たばこ離れ」の懸念があり、税収増をもたらすとは限らない。健康被害を防ぐための税という視点からも、増税論議を深めてほしい。

 「環境や体の面から増税ありうべしかなと思う」。鳩山由紀夫首相は厚労省が来年度税制改正で要望した、たばこ税増税に理解を示した。長妻昭厚労相も「欧州並みの価格にする必要がある」と述べている。

 参考とする欧州のたばこ一箱の価格は英国八百五十円、フランス五百五十円、ドイツ四百六十円と日本よりはるかに高い。たばこに別れを告げさせようと、あえて税金を高くしているためだ。

 増税要望の背景は、まずは健康問題であり、火の車の財政状況もある。本年度末で国と地方の借金は八百兆円を超え、高齢化を背景に社会福祉予算も膨らむ一方だ。

 日本の一箱三百円のたばこにかかる税は百七十五円。欧州並みにすれば兆円単位の税収増が見込めるが、この十年、三回増税したのに税収は増えず二兆円強でほぼ横ばいのままだ。値上げは、たばこ離れを招く時代に入ったと認識すべきなのだろう。今回、大幅に税金を引き上げれば、たばこ離れにさらに拍車がかかり、結果的に欧州の禁煙誘導策を後追いする。

 駅などの喫煙規制の強化も消費を鈍らせた。たばこの箱には「肺がんで死亡する危険性は非喫煙者の約二倍から四倍」などと記されている。喫煙による超過医療費は年一兆円をゆうに超えるとの調査結果もあるほどだ。たばこは本人だけでなく周りで煙を吸わされる人の健康も損なう。禁煙、分煙などの規制は着実に広がり、国民の多くが受け入れているようだ。

 地球温暖化対策の一つに環境税の創設がある。二酸化炭素を排出する石炭、石油などの化石燃料に高い税金を課して使用量を抑え込む手法だ。税制は時代の要請に応える役割も担わされている。

 たばこも税を重くし禁煙へと誘う制度設計なら許容されるのではないか。とはいえ、たばこは法律で認められている嗜好(しこう)品であり、喫煙は他人に迷惑をかけない限り自ら判断すべきものなので、喫煙者に理解を求める手順も忘れてはなるまい。

 増税はたばこ離れとなって葉タバコ生産農家などに跳ね返る。政府税調はその点にも配慮し、転作奨励金などの環境整備にも努めながら、国民の健康を最優先に改正論議と向き合うべきだろう。

 

この記事を印刷する