アフガニスタン大統領選挙で、現職のカルザイ大統領の再選が決まった。対立候補のアブドラ前外相が決選投票への不参加を表明したことから、選挙管理委員会は7日に予定していた投票の中止を決め、カルザイ氏の当選を宣言した。
8月20日の第1回投票から2カ月半。選挙戦を巡る混乱はひとまず収束したものの、後味の悪い結末だ。
カルザイ氏は第1回投票で当選に必要な過半数を得たと発表されたが、不正票が続々と発覚し、決選投票実施を迫られていた。アブドラ氏が決選投票への不参加を決めたのも、「公正で透明な選挙が期待できない」という理由からだった。
そもそも国際社会がアフガンを支援し、米欧を中心に兵力を増派してきた当面の狙いは、公正かつ透明な大統領選を成功させ、政権の求心力を高めることにあった。選挙の不正を巡る混乱は、再選されたカルザイ氏の正統性に疑問符をつけた。
カルザイ氏は当選確定後、「腐敗根絶に全力で取り組む」と語った。同氏の側近や親族が汚職や麻薬取引など不正行為にかかわっているとのうわさは絶えない。政権の不正や汚職の追放に全力を挙げ、内外の信頼回復に努めることがまず重要だ。
安定政権の樹立も欠かせない。カルザイ氏は指導力より調整能力が持ち味とされる。地方で影響力を持つ部族勢力との協調に加え、新政権の正統性を確立するため、アブドラ陣営の取り込みも課題になろう。
米国のオバマ政権は再選が決まったカルザイ氏を「正統な指導者」と認め、同政権との協調を続ける立場を示した。米軍の派兵規模はすでに6万人を超えているが、さらに1万人程度の増派を検討している。
アフガンの治安は悪化の一途をたどっている。反政府勢力タリバンに同調する勢力は隣国パキスタンにも広がり、アルカイダなどテロ組織の温床ともなっている。アフガン安定化を通じた国際テロの撲滅は、今後も国際社会の重要課題である。
日本の貢献が問われる。来年1月に打ち切る予定のインド洋上での海上自衛隊による給油活動に代わり、「小切手外交」にならない効果的な支援策を打ち出せるのか。オバマ大統領の訪日は来週に迫っている。