絶滅が心配される生物が前年より363種増えて、1万7000種あまりに上るそうだ。国際自然保護連合という団体がこのほど発表した2009年版の絶滅危惧種リストが示す。懸念される「生物多様性」の危機は高まる一方である。
▼しかしアフリカの珍しいカエルがいなくなったからといって、何が問題なのかと思う人もいるだろう。長期的には、様々な適応力を持ついろいろな生物がいることで、生物全体は環境変化に対応していける。もし種類が減ると適応できる幅が狭まり、一網打尽になる恐れがある。企業にも似たようなことがいえる。
▼野村証券(現野村ホールディングス)の中興の祖といわれた奥村綱雄元社長は「ダイヤモンド経営」を標榜(ひょうぼう)した。多面体にカットされたダイヤのように、多様な人材がそれぞれ個性を発揮して光り輝く経営を目指した。だが急成長する中で、どこで切っても同じ顔が出る金太郎アメのような体質に変わり暴走した。
▼バブル経済崩壊後、損失補てん問題や総会屋事件が次々と表面化した。元会長の相田雪雄さんは「ダイヤモンドがいつの間にか、つるつるの球体になってしまった」と反省していた。とはいえ一糸乱れず指示に従う組織の方が経営者は楽だ。ゴマすりも心地よい。今も多様性の危機にある企業は少なくないだろう。