HTTP/1.1 200 OK Date: Tue, 03 Nov 2009 22:17:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:あなたの病気には治療法はありません。そう宣告された時、人は…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年11月3日

 あなたの病気には治療法はありません。そう宣告された時、人は何を考えるのだろうか。東大法学部に入学して一カ月。弁護士になる夢に向かって走りだした内藤佐和子さん(25)を待っていたのは、多発性硬化症という一万人に一人の難病だった▼神経を覆う被膜が傷つき、神経がむき出しになる。身体のどこで、いつ発症するか予測はできない。落語家の林家こん平さんが闘っているのもこの病気だ▼法律家への道は断念するよう医師から忠告された。病気を憎んだ時期もある。それでも、持ち前の前向きな性格は変わらなかった▼数々の学生団体の活動に参加した。ビジネスプランコンテストに優勝して、百万円の賞金を獲得。体験記は昨年の「出版甲子園」で入賞し『難病東大生』を先月に出版した▼手足のしびれや視野が狭くなる症状は何度か起きた。対症療法のステロイド点滴を十回ぐらい受けている。朝、目覚めると体が動かないかもしれないという恐怖心は消えない。それでも「難病になる前より充実した人生を送っていると断言できる」と自著に書く▼先日、インターネットの検索サービスの会社を設立した。収益の八割を難病研究に寄付するという。進歩した医療技術で病気を治し、弁護士になる夢を再び追いかけたいと語ってくれた。「限界」とは、自らつくってしまうものであることを教えられた。

 

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