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春秋(11/4)

 使い古して役に立たない布。つぎはぎの服。転じて欠点や失敗。「ぼろ」という言葉を辞書で引くと否定的な意味合いの解説が並ぶ。青森県の農家で眠っていた、つぎはぎだらけの「ぼろ着物」を集めた展示会が東京の浅草で始まった。

▼在野の民俗学者、田中忠三郎さんが40年以上かけて集めた品々だ。はぎれをあてがい、継ぎ足した野良着や夜着、寝具などおよそ300点を展示する。「そんなぼろは青森の恥だ」。非難めいた視線を浴びての収集活動だったという。庶民の芸術、リサイクルの先駆例として注目されるまで、かなりの時を要した。

▼全国各地で展示会を開き、昨年は「BORO」の題名で写真集も出版した。黒澤明監督の映画に衣装を提供したこともある。展示物には貴重品もあるが気にせず触ってほしいと田中さん。「すべての物は誰かが作り、誰かが使った。ぼろには人と人を結ぶ絆(きずな)の意味もあったことを感じ取ってほしい」と思うからだ。

▼東京都心の高級百貨店にこの秋、顧客の手作り志向に応え手芸用品の大型専門店が出店した。JRの駅ビルには編み物を習える喫茶店が誕生し、週末の公園では使用済みの服を売り買いするフリーマーケットが盛んだ。節約になり、ぬくもりも伝わる。不況でも生活を楽しむ人々のたくましさが昔の農民とだぶる。

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