HTTP/1.1 200 OK Date: Mon, 02 Nov 2009 22:16:48 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:日銀リポート デフレ警戒を強めよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

日銀リポート デフレ警戒を強めよ

2009年11月2日

 日銀が経済と物価の展望リポートで「景気は持ち直していく」と強気の見方を示した。前提となる物価は下落傾向が強まり、再びデフレが加速する懸念もある。過度の楽観論に傾くのは禁物だ。

 日銀が半年に一度、発表する展望リポートは金融政策運営の基礎となる経済と物価に対する見方を示したものだ。今回は二〇〇九年度後半について景気回復を見込んだうえで、一〇年度も「この回復傾向は維持される」と記した。

 だが強気見通しの根拠となると、心もとない。金融危機で痛んだ米欧企業の損失処理が進み「輸出を起点とする企業部門の好転が家計部門に波及する」というにとどまっている。

 これまでの回復基調についても「海外経済の改善と経済対策の効果」を挙げているが、財政赤字を背負った各国の景気対策はいずれ息切れする。金融市場では「米欧民間部門の損失処理も進んでいない」という見方が強い。

 日本経済は依然として海外依存で、輸出が伸びなければ成長しない体質を抱えている。日銀リポートが示しているのは「米欧が回復するなら、日本も回復しますよ」という淡い期待にすぎない。残念だが、それが現状だ。そこをしっかりと踏まえる必要がある。

 見逃せないのは、物価に対する日銀自身の甘さだ。九月の消費者物価指数は生鮮食品を除いたベースで前年同月比2・3%下落した。七カ月連続のマイナスである。国際標準である食料とエネルギーを除いたベースでは1・0%に下落幅が拡大している。

 この数字が示しているのは、日本経済に再びデフレが舞い戻りつつあるという実態ではないか。

 にもかかわらず、リポートは(下落幅は)「徐々に縮小していく」とみている。下振れリスクにも触れてはいるが「やや長い目で見れば、物価安定のもとでの持続的成長経路に復していく展望が開ける」とまで記した。

 足元で物価下落幅が拡大し、止まる気配もないのに、なぜそれほど明るい見通しを描けるのか、理解しにくい。日銀はリポート発表と同時に、企業の資金繰り対策に始めた社債とコマーシャルペーパー(CP)の買い取りを年内で終了することを決めた。

 あえて言えば、金融緩和を早く打ち止めにしたい意図が先にあって、楽観論を強調しているのかと疑いたくなる。海外頼みの回復なのに、日銀がこの調子では本物の景気回復は望めそうもない。

 

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