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しばらく前、色づき始めた新宿御苑を歩くと、ジョロウグモがあちこちに大きな網を張っていた。巣を作るのはメスで、周りをよく見ると、はるかに小さなオスが数匹いる。残り少ない繁殖期に愛をささやくが、うかつに近づくと巣の主に襲われるそうだ。求婚も命がけである▼結婚話に乗じた詐欺罪で起訴された女(34)が、別の男性4人からも計1億円を得ていたと報じられている。複数で大金を振り込む図は、自然界の非情に重なる▼女が張った網はインターネットだった。良縁を求めるサイトで知った男性に「支援」を訴え、ブログでおしゃれな生活を公開する。そこには、手料理、食べ歩き、高級外車と、男性をおびき寄せる蜜をまぶしていた。女はこうして、20人ほどに接触したとされる▼ネットを介した出会いで泣くのは女性、毒手は男に生えているという「常識」を揺るがす展開である。4人はこの女と接した後、なぜか相次いで亡くなった。不自然な最期と女のつながりに世間の目が注がれている▼晩婚の時代、30代前半の未婚率は男性で50%に迫り、女性も30%を超す。相手を探して積極的に動く「婚活」の市場で、女は悪意を糖衣にくるみ、時には甘えてみせ、良縁を願う中高年を信じ込ませたらしい▼ネット上では、異性に化けることも、若く装うこともたやすい。姿形をさらしての付き合いでさえ、あばたがえくぼになる男女の仲である。その女が地味だ平凡だと聞くほどに、実像と虚像の境界はぼやけ、ネット空間で増殖する毒素が浮き彫りになってくる。