小柄で物静かな女性だった。インタビューで「あなたにとって中国とは?」と第1問をぶつけた。「大きな壁のなかの国」と答えた。「壁の外にウイグル、チベットがある」と言葉が続く。だれの発言か、おわかりのひともいるだろう。
▼「中国に一番憎まれている女性」「ウイグルの母」――。「ラビア・カーディル自伝」には、こんな説明がつく。どんな人物かは、この本を読めばわかるが、中国にとっては「テロリスト」らしい。自伝の日本語版刊行を理由とした今度の来日にあたっても、中国政府は、日本政府が査証を発給した点に抗議した。
▼中国政府に「一番憎まれている女性」がラビアさんなら「一番憎まれている男性」はチベットのダライ・ラマ14世か。ラビア自伝にはダライ・ラマが序文を書く。盟友であるふたりが先週、東京の外国特派員協会で相次いで記者会見した。批判された中国は愉快ではないだろう。が、余裕もあるはず、ともみえる。
▼ふたりとも日本政府当局者と会っていないからだ。ダライ・ラマはオバマ大統領からも会談を拒まれた。それ以前の3人の大統領はいずれも会っているから政策転換だ。日本でも、2年前、民主党の鳩山由紀夫幹事長はダライ・ラマに会い、支持を伝えたが、首相になったら会わない。日米とも、中国には抗(あらが)えぬ?