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天声人語

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2009年11月2日(月)付

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 東京・新宿駅の近くに、専門学校と並んで女子大がそびえている。その足元で商う不動産屋さんの張り紙が目にとまった。〈寮からの脱出〉とある。学生寮からアパートに移りましょうという宣伝らしい▼学校や職場の寮は経済的だし、管理の目もあるから親元は何かと安心だ。半面、息苦しさを感じる人もいよう。気ままな一人暮らしにあこがれて都会に出た若者であれば、張り紙の通り、寮は抜け出すべき所かもしれない▼多くの人は生涯に何度か引っ越しを経験する。間借りや寮が「住宅すごろく」の振り出しなら、社宅や賃貸マンションなどを経て、上がりは庭付きのマイホームというのが世間相場だろうか。ところが、究極のゴールと思われる高級住宅地の豪邸に、まだ先があった▼鳩山首相が先日、田園調布の自宅から永田町の公邸に越した。「私どもには大きすぎる」と戸惑いながらも、職住接近によって国会論戦や日本のかじ取りに専念するという▼由緒ある洋館で生まれ育った鳩山さんだ。サイコロを振る前から上がっていたようなものだが、今度はお金で買えない住所への転居である。政治を志した一人として、また国民から変革を託された者として、気を引き締め直す機会にしてほしい。よりよい明日を目ざす国政のすごろくに、上がりはない▼週明けの列島は寒気の南下で冷え込むと聞く。寒という字を見ると、「年越し派遣村」のテントへと続く行列を思い出す。振り出しどころかサイコロさえ握れない路上生活者にとって、しんどい季節の始まりである。

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