上場企業の2009年7〜9月期の決算発表がピークを越えた。これまでに発表した527社(金融などを除く)の経常利益は4〜6月期の2.3倍に膨らみ、10年3月期の損益予想を上方修正する動きも出始めた。しかし景気刺激の政策に支えられた面も大きい。企業業績の自律的な回復は、まだ先とみるべきだ。
今の日本経済は鉱工業生産がピーク時の8割の水準。「8割経済」のなかで企業は、生産方法の見直しや人件費の圧縮などを進め、業績を向上させる努力が求められる。マツダは7〜9月期の国内工場の稼働率が約80%にとどまったが、営業損益が4四半期ぶりに黒字に転換した。
体質改善に手応えを感じ始めた企業は、年間を通じても損益の改善を見込む。今期に減益予想だったホンダが一転、増益の見通しを発表。ソニーとパナソニックは最終赤字が従来の予想より縮小しそうだ。
企業業績は底を打ったが、経営者の先行きへの見方は厳しい。コスト削減には限界があるうえ、最も重要な成長戦略を描きにくいからだ。
世界各国はこの1年、政策を総動員し、景気の底割れを防いだ。日本のエコポイントや米国の低燃費車への買い替え支援、中国の小型車の取得税減税、農村部の家電購入補助などだ。すべてが日本の自動車や電機などの業績を下支えした。
問題は景気対策の効果がいつまで続くか、だ。「10〜12月期は回復の勢いが衰え始め、10年1〜3月期は厳しい」(NECの矢野薫社長)。多くの経営者が共有する慎重な景況観は、世界的に対策の効果が失速することへの懸念を映している。
実際、既に打ち切られたり、利用に陰りが見えたりする対策もある。官による需要喚起に、いつまでも頼ってばかりはいられまい。
鉄鋼各社からは、中国市場での市況悪化の可能性が示唆された。それ以外にも円高や長期金利の上昇など決算で挙げられたリスクは数多い。企業業績が二番底に向かう恐れも否定できないが、そんな時にこそ成長の布石を打つべきだ。東京エレクトロンのように、研究開発費を計画比で上積みするところもある。
不透明な環境を生き抜く、経営の意志の強さが試されている。