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10月31日付 編集手帳

 三遊亭円楽さんが「星の王子さま」などの愛称で茶の間の人気者になったとき、テレビ局が芸と人物の特集番組を放送したことがある。師匠の円生さんがゲストで出演した◆師匠の語った言葉を円楽さんの著書から引く。〈円楽はおしまいです。大喜利なんぞというもので人気が出たもんだから、テレビばっかり出て、芸がざらざらしてどうしようもない。そんな安っぽい芸人で一生終わるのか。お前はもう駄目だ〉(白夜書房「圓楽芸談しゃれ(ばなし)」)◆生放送で、取り消しもできない。円楽さんはテレビとのかかわりを一時、断ち切っている◆後年、師匠と行動を共にして落語協会を脱退し、師匠亡きあとは一門を率いて、資金集めなど処世の苦しみをひとり背負った。脂ののる50代のその時期に、芸に専心できたならば――〈あたしの落語はどれだけのものになったか。それを思うと悔やんでも悔やみきれない〉という◆円楽さんが76歳で亡くなった。売れることの喜びと怖さと、ともに肌身で知り抜いた人である。刻みの深い人生観を底に沈め、晴朗な口跡で聴かせてくれた「(やぶ)入り」や「(うまや)火事」が懐かしい。

2009年10月31日01時17分  読売新聞)
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