政府主導による日本航空(JAL)救済が決まった。高額な企業年金の是正を条件に公的資金による資本増強などが柱だ。経営者・社員はこれが最後の再建チャンスと覚悟すべきである。
映画や小説で日航は何度も取り上げられてきた。ナショナル・フラッグ・キャリア(国を代表する航空会社)として海外に飛躍した輝かしい歴史と世界最悪の航空機事故。高いブランド力の裏で繰り広げられる社内抗争。現在は倒産の瀬戸際だ。
政府は官民共同出資の公的機関「企業再生支援機構」を活用して日航を再建することを決めた。機構は独自に日航の資産を査定して支援の可否を決める。日航は機構を通じた公的資金による資本増強などを行う。また政府は関係閣僚による対策本部も設置する。
救済策は国土交通相の専門家チーム「JAL再生タスクフォース」の再建計画を反映したものだ。
公的支援が動きだすまで年内に千八百億円のつなぎ融資と来年三月までに三千億円の資本増強が必要となる。そこで政府保証が付いた日本政策投資銀行の危機対応融資のほか、民間銀行団には二千五百億円程度の債権放棄と債務の株式化を要請することになった。
リストラ策としてグループ社員約四万八千人を一万三千人程度削減する。また国際線と国内線計四十五路線を廃止する。企業規模を縮小して筋肉質の企業づくりを目指す−との方向は妥当なものだ。
だが最低条件は企業年金の減額だ。現在の給付利率は4・5%と高く毎月数十万円受給している退職者もいるという。公的資金が年金に充てられては国民の理解は得られない。政府は特別立法も検討する構えだが、当事者間で早期に解決することを求めたい。
再建には何よりもスピードが重要だ。日航経営陣は銀行や取引先、株主などの協力と支援を一刻も早く取り付けるべきだ。安全運航の徹底とともに市場での信頼感を高めなければ利用客は戻らない。
社員は会社が危機的状況にあることをもう一度確認すべきだ。極端な労使対立は許されない。救済策が行き詰まれば法的整理に追い込まれよう。
政府は再建のための環境整備を急ぐ。割高な着陸料や空港使用料を引き下げるなど、航空会社と空港の国際競争力を高める政策が重要だ。航空自由化対策をしっかりと推進してもらいたい。
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