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社説2 「貸し渋り」対策法に残る不安(10/31)

 民主、国民新、社民の3党連立合意による「中小企業金融円滑化法案」を政府が閣議決定した。中小企業や住宅ローン債務者が返済猶予など貸し付け条件の変更などを申し出た時は金融機関が「できる限り」申し出に応じるよう努力義務を課す。

 与党は当初「貸し渋り・貸しはがし対策法」と呼び、亀井静香金融担当相は国民新党のマニフェスト(政権公約)に沿い返済猶予の訳語を取って「モラトリアム」と名付けた。強制的な法案で金融機関に損失が及ぶ印象を与え、銀行株が下がるなど市場に不安が広がった。

 決定した法案は当初に心配された金融の常識に反する内容でなく、従来の政策の延長線上に落ち着いた。返済猶予は「返済条件の変更」の一部と解釈され、その言葉自体は盛り込まれなかった。

 法案は中小企業に対する融資をできる限り柔軟に実施するよう金融機関に促した。債務返済の負担を軽くするための返済条件の変更や借り換えの要請にも、金融機関ができるだけ応じるよう求めた。

 借り手や金融機関が制度を乱用する懸念は薄らいだ。返済猶予などに応じた企業が倒産した際の政府の損失保証は融資残高の4割とし、残りは金融機関の負担にしたためだ。

 不安定な経済情勢のもと、事業継続が可能な中小企業が金融機関の融資の手控えによって資金繰りに困る可能性はある。米欧でも中小企業向け融資の確保が課題となっており、政策面の目配りは必要だろう。

 金融機関には条件変更などの実績を半年ごとに公表するよう義務付けた。中小向け融資に不熱心と評価されないよう、金融機関に一定の圧力をかける効果を狙った。

 だが、金融機関に対する強要の度合いが濃くなりすぎるのは良くない。法案を盾に民間同士の取引に政治家が口をはさんだり、金融庁が裁量行政に走ったりする余地も残る。不透明な締め付けは金融機関の新規融資への態度を一段と慎重にさせ、逆効果となりかねない。

 金融検査では条件変更した貸出債権を不良債権扱いとしないよう指針を緩める。日本の金融行政が不透明との印象を内外に持たれ、市場の不信を招かないようにしてほしい。

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