護衛艦「くらま」と韓国籍コンテナ船の衝突は、海の難所・関門海峡で起きた。狭い航路の中で船はどう誘導されたのか。事故原因の究明とともに、国内の数ある難所での安全対策を再点検したい。
関門海峡は狭い海域が二十七キロも続く。潮の流れも速いことで知られる、国内有数の海の難所だ。事故が起こった「早鞆(はやとも)の瀬戸」は、航行可能な航路幅はわずか五百メートルにすぎない。
ここでは港則法という船舶の法律に基づいて、右側通行が義務づけられている。コンテナ船がこの狭い海域で、前を行く貨物船を追い越す時に事故は起きた。
海上保安本部の海上交通センターと貨物船やコンテナ船との無線交信は、衝突の四分前から始まり、管制官が左側から追い越すよう誘導していたもようだ。二分前には「くらま」の接近をコンテナ船に伝え、注意を促したものの、間に合わなかった。
門司海上保安部などが関係者らから事情聴取しているが、まずはどういう経緯で事故が起こったか、速やかに詳細な事実関係を把握し、事故原因の解明に尽くしてほしい。管制官の誘導が適切であったか、コンテナ船の操船に問題はなかったか、細かなチェックが求められる。「後進いっぱいをかけた」という「くらま」側の衝突回避の行動にも調査が必要だ。
とくに、追い越す海域として適当だったかは疑問だ。しかも、護衛艦が対向航行している時だ。「くらま」に異常接近を伝えたのは衝突の数十秒前というだけに、管制の在り方が問われそうだ。
だが、航空管制と異なり、港則法では航路に入る船の順番や時間などの指示には、船舶側が従う義務があるが、操船は船長の判断に委ねられている。潮の流れやレーダーに映らない小船については、同センターでは把握できないためだという。
しかし、関門海峡では漁船など小船を除いても一日約六百隻もの船が往来し、二〇〇八年には三十五隻の衝突事故が起きている。管制態勢に不備はないか。狭い海域での追い越しなどで新たな航行ルールは必要ないか…。さまざまな安全面の問題をはらんでいるのは、間違いなかろう。
東京湾や伊勢湾など、大型船舶や日本の海に疎い外国船が行き交う海域では、どんな大規模な事故が起きるか分からない。海の難所の多い島国だけに、安全対策を見直す契機とすべきだ。
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