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日本航空の再生に向け、政府をあげて支援することになった。関係各省による対策本部を設け、公的管理下で経営の立て直しを進める。
民間企業にこれほどまで政府がてこ入れするのは異例のことだ。なぜ支えるのか、国民にどんな利点があるのか。前原誠司国土交通相はもちろん鳩山由紀夫首相も、納得いく説明をしなくてはならない。
日航は資金繰りが悪化し、11月中に2千億円規模の借り入れが必要になった。だが民間金融機関は追加融資には後ろ向きだ。もはや政府保証がない融資は期待できなくなっている。
来年3月までに3千億円規模の資本増強も必要とされ、公的資金なしには、それもままならない。
そこで、発足間もない官民出資の再生ファンド「企業再生支援機構」に支援を担わせ、政府保証つきの融資や公的資金による資本注入を検討する。
民間企業に公的資金をつぎ込むのは本来、禁じ手である。経営に締まりがなくなり、政府介入によるゆがみも無視できないからだ。
90年代の金融危機では主要銀行に公的資金が注入されたが、守るべきは個々の銀行ではなく、金融システムだという原則があり、それが国民の理解を得る土台にもなった。
日航の場合も、守るのは日本の航空網や健全な航空市場であって、長年の放漫経営で危機を招いた日航そのものではない。その原則を押さえておく必要がある。
この点で、政府が日航の財務の重荷になっている約8千億円の企業年金債務を削減しようとしているのは、うなずける。日航退職者の給付水準を強制的に引き下げるために、特別立法を検討するという。
労働債権のカットには慎重であるべきだが、実質的に債務超過の日航に公的資金を投入する以上、やむを得ないのではないか。
当然のことながら、痛みは経営陣と従業員、株主はもちろん、銀行、地方空港などすべての利害関係者に及ぶ。公的資金投入にはそれが条件だ。
それでも国民の間には、日航の経営失敗のツケをなぜ払わされるのか、という疑問は消えないかもしれない。それに答えるには、いまの「負担」が国民の役に立つ「投資」でもある、と説明できるような再生の理念と道筋を描くことが求められる。
長い目で見れば、日航の再生と経営安定は航空路線網の充実やサービス向上につながる。日航の株価もいずれ上がり、公的資金は回収できる。そんな期待ができる未来図が必要だ。
政府の航空戦略も重要になる。ハブ空港や航空自由化がいかに経済成長と国民の利便をもたらすか、日航再生計画とセットで示さねば説得力はない。
大リーグか、日本球界か。その進路が注目を集めた超高校級左腕、岩手・花巻東高の菊池雄星投手が、プロ野球ドラフト会議で6球団に1位指名され、抽選で交渉権を得た西武に進むことになった。記者会見で「語り継がれるような投手になりたい」と語った菊池投手の健闘を祈りたい。
ドラフト前は、日本の全球団と大リーグ8球団が菊池投手と面談するなど異例の事態となった。20年に1人とも言われる逸材が、メジャー挑戦の意思を公言していたためだ。
日米間にはアマチュア選手の獲得に関する取り決めはない。「ドラフト対象選手は互いが尊重する」という紳士協定があるだけだ。アマが大リーグ行きを望んだ場合、阻む規定はない。
悩んだ末、菊池投手が国内球界入りを表明すると、日本の各球団は「日本球界にとってよかった」と胸をなで下ろした。だが、手放しで喜んでいる場合ではないだろう。
昨年の記憶がまだ新しい。社会人の田沢純一投手が大リーグへ挑戦する意思を表明し、国内の全球団にドラフト指名しないよう求める文書を送った。各球団は指名を見送り、田沢投手はレッドソックスと契約を結んだ。1位指名が確実な選手が日本球界を経ずにメジャーに挑む初のケースだった。
今後も大リーグ側が日本を選手発掘の市場として重視する傾向は一層強まるに違いない。日本にスカウトを常駐させる球団も増えつつある。
これに対して日本球界は、流出防止に追われているのが現状だ。
日本プロ野球組織は昨秋、ドラフトを拒否して外国球団に入った場合、退団しても高卒は3年間、大卒・社会人出身は2年間、国内球団と契約できないという規約を作った。人材の海外流出を抑制するための、一種の懲罰的な自衛策といえる。
自由に契約先を選べるフリーエージェント(FA)権は昨年、取得年数が変更され、07年秋以降のドラフトで入団した大卒・社会人出身の場合、国内移籍は従来の9年から7年に短縮された。だが国外移籍は9年のまま。これもスターの流出防止が理由である。
日本球界は2年連続でアマの有望選手の動向を巡って揺れた。しかし、あらゆる分野で若い世代が海外に挑む時代だ。最高峰を目指す選手は後を絶たないだろう。高校の有望選手が直接メジャーに挑む日も遠からず来る。
ならば、大リーグでの経験をいずれ日本に還元してもらえるような環境を作るほうが、長い目で見て日本球界にとってはプラスになるはずだ。海外FAも国内と同条件にし、直接海外へ進んだ選手への「ペナルティー」も撤廃すべきだ。
空洞化を防ぐためという「鎖国」の発想は、もう時代遅れである。