HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 28 Oct 2009 23:17:44 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:郵政新体制 民営化見直し誰のため:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

郵政新体制 民営化見直し誰のため

2009年10月29日

 旧大蔵省事務次官、斎藤次郎氏が日本郵政社長に就任した。元財務官僚も副社長に名を連ね、郵政事業に対する財務省の影響力が格段に強まった。鳩山政権の郵政民営化見直しは誰のためか。

 亀井静香郵政改革担当相は郵政事業を国営に戻すことはないと公言してきた。だが、株式上場の凍結、郵便・貯金・保険事業の一体的利用、銀行法と保険業法の適用除外などの閣議決定の実態は限りなき国営であり、民営とは名ばかりにすぎない。

 しかも新体制は官頼み。経営トップの斎藤氏に加え財務省(旧大蔵省)出身で前内閣官房副長官補の坂篤郎氏も序列二番の副社長に就いた。政府税制調査会長を務め財務省に近いとされる石弘光・元一橋大学長も社外取締役。「財務省支配」が構築されてしまったかに見える。

 民営化の目的は郵貯と簡保の投資先を不採算事業を多く抱える官から民へと切り替えることにあった。高金利での運用が可能になり景気浮揚の役割も担える。しかし、鳩山内閣の郵政改革の基本方針は「銀行法、保険業法に代わる新たな規制を検討」としており、民営化からわずか二年でその制約が解かれる。郵貯と簡保の三百兆円に上る総資産は財務官僚の管理下に置かれ、再び公益法人など不採算部門に投資されかねない。

 概算要求が九十五兆円超に膨らんだ来年度予算編成は大幅に削らないと歳入の半分以上を借金に頼らざるを得ない。郵貯資金の出し手と引き受け手の双方を実質的に牛耳る財務省主導で、国債購入が上積みされる可能性もあろう。

 民営化見直しは国民のための利便性向上が柱だ。全国二万四千の郵便局がより多くの利益を生みだしてネットワークを維持しサービスに努める必要がある。

 そのためには郵便配達のついでに貯金の出し入れ業務などで手数料を稼いだり、物品の販売・配達などの事業多角化による収益増大の自助努力が何より求められる。収益を上げられなかったら税金頼みの支援策が浮上し、国民には利便性向上や一体サービスどころか、そのツケを回される事態を招きかねない。

 今回の新体制人事や民営化見直しは亀井氏主導で進められているとされ、鳩山首相の意思が伝わってこない。首相は郵政改革を担当相に丸投げしたのか。国民が政権を委ねたのは民主党であり、国民新党ではない。それを忘れるべきでない。

 

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