HTTP/1.1 200 OK Date: Wed, 28 Oct 2009 22:16:54 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Connection: close Age: 0 東京新聞:中医協人事 多様な声を反映させよ:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

中医協人事 多様な声を反映させよ

2009年10月28日

 診療報酬を決める中央社会保険医療協議会(中医協、厚生労働相の諮問機関)における日本医師会の影響力を弱めることには異論はない。だが、人事が恣意(しい)的にならないように透明なルールが必要だ。

 中医協委員の人事で長妻昭厚労相は、日医が推薦する三人の委員の再任を拒否し、代わりに地方医師会から二人、大学病院から一人を任命することを決めた。その理由について厚労相は、病院勤務医の待遇改善や疲弊した地域医療の再生の担い手の声を反映させることなどを挙げた。

 中医協の最大の任務は、個々の医療行為や薬剤費などの具体的な価格(診療報酬)を決めることである。委員は診療側、健康保険組合連合会など医療費の支払い側、公益委員の三者構成となっているが、問題は、診療側の中で日医の発言力が強すぎることだ。

 以前は診療側委員八人のうち歯科医師二人、薬剤師一人を除く医師五人はすべて日医推薦のため、開業医の立場を尊重し病院の主張が反映されにくいとの批判が強かった。二〇〇四年に発覚した中医協汚職事件をきっかけに委員の選任方法の問題が指摘され、支払い側と同様に診療側も委員を一人減らして七人とし、医師五人のうち二人は病院団体が推薦した医師が任命されることになったが、開業医優先の姿勢は変わらなかった。

 現在の医療崩壊は、激務を強いられる病院勤務医が次々と退職していくことが大きな原因とされる。とりわけ地方では深刻な医師不足を招いている。医療崩壊を防ぐには、勤務医の待遇改善を図る必要があり、開業医重視の診療報酬体系を改めなければならないが、日医の反対に遭って配分の見直しはなかなかできなかった。

 今回の人事は日医の影響力を排除し、勤務医に手厚く報いようというのが狙いとみられる。

 だが、新たに任命された委員は先の衆院選で民主党候補を支持した茨城県医師会と日医の現執行部に距離を置く京都府医師会の医師で、論功行賞と見られても仕方がない。どの開業医、勤務医も納得できるだけの透明性の高い公平な選任を行うためには明確なルールを設けなければならない。

 医療を取り巻く状況は変化し、医師だけで医療が成り立たず、チーム医療の重要性が強調されるようになっている。今後は、看護師など他の医療職にも委員への道を開くなど、医療者全員の声が適切に反映されるように委員構成を抜本的に見直すことも課題だ。

 

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