HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Wed, 28 Oct 2009 02:17:50 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:東京・神田神保町の古書店街に、予備校生、大学生時代に毎日の…:社説・コラム(TOKYO Web)
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【コラム】

筆洗

2009年10月28日

 東京・神田神保町の古書店街に、予備校生、大学生時代に毎日のように通った。難解な哲学書を手に取り、思索にふけるふりをして大人の気分に浸ったことを思い出す▼最近では、太平洋戦争当時の取材のために、戦記や近現代史を専門に扱う古書店で絶版本を探すことが多かった。いまは新刊書がすぐに店頭から消えてしまう。取材のためにも古書店は不可欠な存在だ▼きのう始まった「神田古本まつり」は今年で五十回目。約百万冊が並ぶ青空市は、身動きできないほどの人でごった返した。江戸時代は武家屋敷街。明治以後、近隣に開校した私塾や専門学校にあわせ、書店が開業した。戦災にも残り、現在は約百六十の古本屋が集中する世界最大の古書店街だ▼いま出版界を取り巻く状況は厳しい。昨年一年間の新刊書の発行点数は約七万六千点。三十年前の三倍近いのに、販売部数はほぼ同じだ。売れないから点数が増えるという指摘もある。書店も十年間で六千店減った▼古本屋も減っているが、神保町は逆に増えている。文学、歴史、自然科学、美術、サブカルチャー…。江戸以降のあらゆるジャンルの本がそろうこの町には、知識と文化の蓄積という見えない磁力があるのだろう▼青空市で、新刊では入手しにくい古書を八冊買った。かなり重かったが、弾むような気分になった。これも神保町の魔力なのか。

 

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