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社説2 待ったなしの相続差別撤廃(10/28)

 政治の怠慢と言わずして何と言えばいいのか。「法の下の平等」を定めた憲法14条に違反するとの批判にさらされながら、「非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の2分の1とする」という民法900条の規定を放置してきたことである。

 子どもが生まれた環境によって法的に差別されることは許されない。千葉景子法相は早期に見直す考えを明らかにしているが、当然だ。もはや待ったなしの段階にきている。

 先に、最高裁第2小法廷がこの民法規定について改めて「合憲」の決定を出した。最高裁は1995年、大法廷が合憲と判断しており、今回の決定もそれに沿ったものだ。

 しかし、大法廷決定の時点で、すでに15人の裁判官のうち5人が「違憲」だと主張した。その後、裁判官5人で構成する小法廷でも、合憲対違憲が3対2で結論がぎりぎり合憲になる例が相次いでいる。

 今回の決定では、携わった裁判官4人のうち3人が合憲と判断した。ただし、1人は訴訟対象になった相続があった2000年に合憲だったとしても、「現時点では違憲の疑いが極めて強い」と述べている。

 その意味はこうだ。2000年の相続を「違憲」と判断すればそれ以降の相続についてあらたに訴訟が起こる可能性がある。しかし立法府が法改正すればそうした問題は起こらない――。最高裁は「合憲」と結論を出しつつ、立法府に決断を求め続けているともいえるのである。

 民法の規定は、既婚者が配偶者とは別の相手との間につくった子どもを想定して明治時代に設けられた。しかし、法的に結婚していない事実婚のカップルが増えるなど、家族の形は多様化した。婚外子も法律の想定を超えて広がっている。

 そうした現実を踏まえ、法制審議会が規定撤廃を求める答申を出したのが1996年である。以後たなざらしになったままだ。少子化対策が叫ばれる中、国連でも批判されるような子どもに対する差別が残っていることは到底納得できない。

 今回の決定に反対し違憲と主張した裁判官は「もはや立法を待つことは許されない時期に至っている」と述べた。なお放置すれば、遠くない将来にこれが多数意見となろう。

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