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所信表明演説 「理念」だけでは物足りない(10月27日付・読売社説)

 鳩山政治の「理念」満載である。確かに理念は大切だ。しかし、理念だけでは政治が動かないのも、また事実だろう。

 鳩山首相が、就任後初めて所信表明演説を行った。

 「いのちを守り国民生活を第一とした政治」「『居場所と出番』のある社会」――首相は自らの政治理念を滔々(とうとう)と披歴した。

 官僚依存を排して取り組む「戦後行政の大掃除」では、税金の使途を「コンクリートから人へ」と変える。友愛政治の原点は、「弱い立場の人々、少数の人々の視点の尊重」であると力説した。

 エピソードを交えた、平易な言葉による演説に、政権交代を実感した人もいたに違いない。

 経済・外交政策についても、首相は、理念の延長で語った。

 例えば、経済は「経済合理性に偏った評価軸」から「人間のための経済」への転換を提唱した。

 外交では、日本が東洋と西洋、先進国と途上国、多様な文明の間の「架け橋」としての役割を果たすと表明した。温室効果ガス削減の環境外交も、東アジア共同体構想も、こうした「哲学」のもとに進める考えのようである。

 しかし、理念は、法案や政策として具現化されねばならない。今国会で、鳩山内閣は、その用意がどこまであるのか。

 子ども手当やガソリン税の暫定税率廃止、高速道路無料化などの家計支援によって「人間のための経済」への転換を図ると言われても、首をかしげざるをえない。問題は財源をどう確保するかだ。

 郵政事業の抜本的な見直しも、「郵便局ネットワークを地域拠点に」と述べただけだ。見直しの方向を示すことはできただろう。

 首相は、「対等」な日米同盟について、「両国の同盟関係が世界の平和と安全に果たせる役割や具体的な行動指針を、日本の側からも積極的に提言し、協力していけるような関係」と定義した。

 ところが、懸案の米軍普天間飛行場の移設や、海上自衛隊によるインド洋での給油活動について、明確な方針を示さなかった。

 なぜ「ノー」なのかも語らず、対案も提示しない。これでは「対等」な関係などありえまい。

 経済不況・雇用不安の克服と、財政再建、核ミサイル開発を続ける北朝鮮への対応など、依然として日本政治の課題は多い。

 首相は、こうした厳しい現実の下、理念を実現するための骨太の国家戦略と、政策の優先順位を、国会審議の中で具体的に明らかにしてほしい。

2009年10月27日01時09分  読売新聞)
東京本社発行の最終版から掲載しています。
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