この人も明治維新を思い浮かべ、救国の念から行動を決意したという。1961年、軍事クーデターで政権を奪取した韓国の朴正熙元大統領である。18年間も政権の座を死守したが、最期は側近の凶弾に倒れた。昨日が三十周忌だった。
▼韓国の発展に最も貢献した大統領は誰か。最近の世論調査で朴氏を挙げた人は75%に上る。ノーベル平和賞の金大中氏は13%、反米・左派路線で物議を醸した盧武鉉氏はわずか4%だ。軍事独裁や民主化弾圧という朴政権の影より、「漢江の奇跡」を導いた経済維新に光が当たる。韓国の民主化が定着した証しか。
▼「韓国では、日本もようやく民主主義の国になったとみている」。日本政治が専門の朴チョルヒ・ソウル大副教授は言う。韓国は87年の民主化宣言を経て、政権交代が今や当たり前。日本は戦後初の本格的な政権交代だ。自らの改革を「無血の平成維新」と評した鳩山由紀夫首相の初の所信表明演説も、力が入っていた。
▼弱者の目線、友愛の精神、支え合い、国民への大政奉還……。優しさあふれる主張だが、理想だけで現実は解決しない。財政は大丈夫か。成長戦略や雇用対策は。日米同盟の行方は。一抹の不安もよぎる。新政権は平成維新を遂げられるのか。日本の盧武鉉政権で終わるのか。与野党の本格論戦があすから始まる。