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フルトベングラーといえば20世紀の大指揮者である。指揮棒をユラユラと振るので、わかりにくくて楽団員泣かせだったそうだ。日本の古いファンは「振ると面食らう」などと駄洒落(だじゃれ)を言って面白がったものだと、いつか聞いたことがある▼鳩山首相は、自らのリーダーシップを楽団の指揮者に例える。一番大事なことはハーモニーが奏でられることだ、と言う。しかし発足から40日を過ぎて、郵政の問題など、外れ加減の音色も聞こえ始めている。棒さばきが問われる中での、きのうの所信表明演説だった▼広げた風呂敷はかなり大きい。ありがちだった政策の羅列ではなく、「いのち」「きずな」さらに「人間のための経済」といった深いテーマが響き合って胸に届いた。鳩山さんらしい、理念にあふれた演説だった▼だが演説は、音楽でいえばまだ楽譜だろう。譜面どおりに演奏できなければ拍手はない。指揮者としての本番はこれからになる。曲が美(うるわ)しいだけに、フラフラと棒が定まらなければ国民の不信はより募ることになる▼野に退いた自民党にも初の論戦になる。〈去る者は日に以(もっ)て疎(うと)く 来る者は日に以て親し〉。夏の選挙以降、中国の古詩そのままの、国民にとっての与野党交代劇だった。日曜の参院補選では2敗した。斜陽の中で存在感を示せるか、土俵際の勝負である▼郵政のほかにも普天間飛行場あり、首相の政治資金問題ありと突っ込み所は多い。〈議会の目的は殴り合いを議論に変えること〉。チャーチル元英首相の卓見さながらの丁々発止に期待する。