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東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓の首脳会議、さらにインドや豪州などを加えた東アジア首脳会議がタイで開かれ、鳩山由紀夫首相が自らの東アジア共同体構想を説明した。
鳩山首相の強い思いは伝わっただろう。各国首脳の評価の声も寄せられた。今月初めの中国、韓国との首脳会議に続いて、鳩山首相の姿勢と構想へのアジア各国の理解は深まったのではないか。
ただしASEANには、東アジア地域協力の中核だとの自負がある。昨年から日中韓が集う首脳会議が始まったこともあり、地域統合をめぐる議論の重心が北に移るのではないかとの懸念が生まれている。さらには地域協力をめぐる日中の主導権争いや米国との距離感をめぐっての戸惑いもある。
鳩山首相は米国の関与を求めつつ、ASEANの協力を得て、価値観の異なる国も含めて域内対話を深める姿勢を示した。ASEAN側の懸念の解消につながることを願いたい。
欧州や南北アメリカなど世界の各地で地域統合の動きが進んでいる。東アジアでも共同体をという声が強まるのは歴史の流れともいえる。
その姿はまだ見えないが、欧州連合(EU)とは別の道をたどるということは共通理解といえるのではないか。
東アジアは政治体制や宗教、民族が多様で経済格差も大きい。こうした地域での共同体作りではASEANの経験から学べることが少なくない。
インドネシアやマレーシアなどが67年に創設したASEANは当初、反共連合の性格が強かった。その一方、対話を重ねる中で、資源や領土をめぐる相互の対立を乗り越えてきた。
冷戦の終結後は、社会主義国ベトナムや軍政のミャンマー(ビルマ)なども迎えて10カ国に拡大した。複雑な課題を抱える日中韓に一堂に会する場を提供した。「開かれた地域主義」に基づいて米国やロシア、北朝鮮などとも安全保障を話し合ってきた。
ASEANがこれだけ重層的な協力の枠組みを築きあげてきたのは、敵対や排除をするのではなく取り込んで話し合うことが、自らの安定と繁栄の基盤になると確信してきたからだろう。その実績は正しく評価されるべきだ。
ASEANは政治・安保、経済、社会・文化の各分野で15年に共同体の実現をめざす。地域機構としての充実をさらに図ってもらわねばならない。
ミャンマーの民主化をどう実現していくのか。今回、発足した政府間人権委員会を大きく育てていってもらいたい。食糧安保や貧困軽減、メコン開発など、地域が抱える課題解決の力もつけねばなるまい。
日中韓とASEAN。東アジア共同体の構築は、どちらの推進力が欠けても達成できないだろう。
臨時国会が今日から始まる。鳩山新政権発足から1カ月余り。歯車が回り始めた「政治主導」をめぐって、本格論戦の火ぶたが切られる。
八ツ場ダムの建設中止、子ども手当の創設、補正予算の執行凍結……。目が回るような政策転換の連続だが、官僚主導から政治主導への転換を象徴したのは予算づくりの手法の激変だ。
官僚たちの姿は後景に退き、代わって閣僚、副大臣、政務官の、いわゆる政務三役が主役に躍り出た。省庁間でもめると、閣僚ら政治家たちが寄り集まっては打開策を探る。増額要求だけでなく、削減をも競うという予算編成は、積み上げ型の官僚主導の時代では考えられなかった光景だ。
ただ、政治主導のための体制が整ったかといえば、とてもそうとは言い難い。政権発足以来、各省庁の政務三役はフル回転で多忙を極めている。前政権の補正予算の執行凍結に始まり、来年度当初予算案の概算要求の作り直し、そして12月の予算案決定への詰めの作業が迫る。政府に入る政治家スタッフの数が足りないのは明らかだ。
なかでも、民主党が政治主導の司令塔役と位置づける国家戦略局が十分に機能を果たせないでいる。
菅直人副総理のもとでとりあえず「室」として発足したものの、発令された専従スタッフは2人だけで、先週ようやく担当の首相補佐官が置かれたばかりだ。
政務三役の増員や国家戦略局への昇格、そこへの調整権限の付与やスタッフの充実のためには国家行政組織法改正など大がかりな作業が必要になる。
当初、この臨時国会でそうした立法をすることも考えられたが、先送りされた。来年度予算案は新政権としての最初の試金石だ。選挙公約をどう形にするか、国民に明確なメッセージを送らねばならない。その作業に集中するためだろう、国会の会期を11月末までとし、提出法案も絞り込まれそうだ。
雇用や経済に対する国民の不安を考えても、年内に予算を編成することは最優先の課題といえる。
そうであればこそ、国家戦略室には、もっとてこ入れをすべきだろう。歳出総額や国債発行額といった来年度予算の骨格を示す司令塔なのに、主導的な役割を果たせないままでは設計図なき予算編成になりかねない。
政治主導の根幹は、なにより首相の指導力にある。支える体制がまだ十分とはいえないにしても、閣僚や与党に振り回され、内閣の基本方向が国民に見えにくい印象を与えるようではいけない。
米軍普天間飛行場の移設問題や日本郵政の社長人事を巡り、このところ、鳩山由紀夫首相の存在感が揺らいでいるかに見える。国会論戦では、鳩山氏の「首相主導」力が問われる。