混迷のアフガニスタン大統領選はカルザイ大統領とアブドラ元外相の決選投票に持ち込まれた。今の危機を乗り切るには、誰が勝つかより、正統性のある指導者が選べるかだ。ぜひとも公正選挙を。
任期五年の大統領選は当初、八月二十日に投票され、再選を目指すカルザイ氏が暫定集計で当選に必要な過半数の55%の票を集めた。しかし、不正が相次いで発覚、国連主導の審査委員会は三百万票を超す同氏の得票の四分の一以上の八十万票は不正票と認定したため、過半数に届かなくなった。
同氏が不正調査の結果を拒み、混迷していたが「不正まみれの選挙での当選は認められない」と欧米に説得され、得票二位のアブドラ氏と十一月七日に決選投票を行うことを受け入れた。
誰も過半数に達しない場合の同国憲法に従った手順ではある。しかし、再びイスラム原理主義勢力タリバンによる投票所襲撃の恐れもある。決選投票がさらに混迷を深めてしまわないか心配だ。
八月のような不正の横行を許してはならない。選挙管理委員会は中立のはずなのに、架空の投票所を作り上げてカルザイ氏票を大量に水増ししたり、投票所から回収した投票箱を捨て、中身がみなカルザイ氏票の投票箱にすり替えたりと、およそ考えられぬ手口で政権の腐敗ぶりを浮き彫りにした。
同国南部を中心に人口の四割を占める最大民族パシュトゥン人のカルザイ氏優位は決選投票でも揺るがない。しかし、アブドラ氏も二番目に多いタジク人でタリバン政権と戦った北部同盟の英雄、故マスード司令官の側近。北部の有力軍閥や住民の支持が高い。
仮にアブドラ氏が敗れても結果を受け入れられるよう公正選挙をしてほしい。北部地域が離反すれば、南部地域をタリバンに支配されつつある新政権はますます求心力を失ってしまう。
アフガン増派を検討中のオバマ米政権は「正統性のある政権になるか」を見極め、結論を出すとしている。日本の鳩山政権も、タリバンから離脱した元兵士の職業訓練など新たな民生支援を検討中だが、これもまともな政権でなければ不可能だ。
八月の選挙では日本など各国が監視団を派遣したが、結果的に不正を防げなかった。日本は今度も派遣を検討しているが、より厳しい目が必要だ。それが危険を冒しても一票を投じるアフガン国民の思いを支えることになる。
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