米マイクロソフトの新しいパソコン向け基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7(セブン)」が22日発売された。動作が鈍いと評判が悪かった「ウィンドウズ・ビスタ」を改良し、軽快に動くようにした。新OSによりインターネットの利用がさらに便利になることを期待したい。
「セブン」はウィンドウズの7世代目にあたる。起動時間や操作速度が速くなり、パソコン画面をなぞって操作するタッチパネル機能も搭載した。応用ソフトや周辺機器との互換性も、以前の「ウィンドウズXP」並みに改善された。
マイクロソフトが新OSを3年足らずで発売した最大の理由はビスタの不振だ。「XP」からの移行をためらう利用者が多く、同社も創業以来初の減収減益となった。もうひとつの大きな理由は、パソコンを単体で使うより、インターネット接続に使う利用者が増えているためだ。
金融危機で落ち込んだパソコンの販売もようやく上向き始めた。そのけん引役がメールやウェブの閲覧に適した「ネットブック」と呼ばれる低価格パソコンである。ところが高機能なビスタはネットブックでは動かない。そうした新しい需要を取り込むのも新OSの大きな狙いだ。
最近はインターネット経由で様々なソフトや情報を提供する「クラウドコンピューティング」が広まっている。米グーグルはネット利用に適した「クロームOS」を自ら無償で提供すると発表。マイクロソフトとしてもクラウドに対応した新OSの投入を迫られていたといえる。
クラウド対応のOSとしては米アップルも8月に「スノーレパード」を発売し、パソコンの販売シェアを高めている。パソコンのOS市場はこれまでマイクロソフトの独壇場だったが、IT(情報技術)の主戦場がネットに移ったことで、OSを巡る新たな覇権争いが始まった。
新OSの登場に合わせ日本メーカー各社も新しいパソコンや周辺機器を発売した。OSの交代に合わせ新製品を売る事業モデルだが、クラウドが普及すれば、そうした販売手法も見直さざるをえない。日本のIT産業はクラウドで出遅れているだけに、新OSの登場を自らの事業を見直すきっかけとすべきである。