HTTP/1.1 200 OK Connection: close Date: Fri, 23 Oct 2009 00:17:00 GMT Server: Apache/2 Accept-Ranges: bytes Content-Type: text/html Age: 0 東京新聞:郵政社長人事 脱官僚の本気度を疑う:社説・コラム(TOKYO Web)
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【社説】

郵政社長人事 脱官僚の本気度を疑う

2009年10月23日

 日本郵政次期社長に斎藤次郎氏が就く。官僚の中の官僚の旧大蔵省次官経験者だ。鳩山政権は脱官僚を封印したのか。天下り根絶とも相いれない。政権交代を支持した国民への裏切りにならないか。

 西川善文現社長の後任に財務省の前身、旧大蔵省OBである東京金融取引所社長の斎藤氏が決まったとき、さすがの財務省関係者の間でも大騒ぎになったという。新政権の下で官僚OBの登用などあり得ない−が共通の認識だったからだ。

 鳩山由紀夫首相は先の衆院選で、官僚が政治を実質支配する「官僚内閣制」を葬り、政治家主導への変革を公約した。霞が関からの官僚を受け入れ処遇する公益法人などには巨額の税金が注がれる。天下り根絶も重要政策だ。

 斎藤氏は単なる天下りではなく、複数ポストを転々とする「渡り」になる。官僚登用に亀井静香郵政改革担当相は「官僚を辞めて、かなりたつ」と人選に問題はないとの認識を示し、斎藤氏自らも「官僚を辞めて十五年、元官僚という意識はない」と語った。

 この抗弁が成り立つなら抜け道が認められ、官僚だれしもが自由に天下りできてしまう。斎藤氏の民間経済人としての業績から、郵政事業を熟知しているという話は聞こえてこない。後の次官、武藤敏郎氏の日銀総裁人事を頑(かたく)なに拒んだ理由は何だったのか。

 斎藤氏は一九九三年、当時の細川政権中枢と相談せず、小沢一郎現民主党幹事長と消費税率引き上げの国民福祉税構想を打ち上げた経歴を持つ。今回の人選と小沢氏との関係の有無も気にかかる。

 斎藤氏が選ばれたのは民間人に引き受け手がいなかったためとされるが、この人選には民営化見直し後の狙いが映し出されていないか。郵政グループの株式売却凍結後の限りなく国有化に近い姿だ。資金を市場で運用せず、政府の信用を背景に政策目的で不採算部門にまで資金が流れ、そのツケが国民に回されるようでは困る。

 首相は「(亀井氏から)話があったときは驚いた」と語ったが、首相のリーダーシップはどこへ行ったのか。閣僚に大幅な裁量権を認める政治主導も結構だが、それも首相の大きな戦略が示されることが前提だ。

 鳩山政権の基盤は国民の高い支持率にある。政策決定の透明化や約束の誠実な履行は国民の信頼をつなぎとめる基礎だ。郵政社長人事は国民の心を政権から離れさせることにならないか。

 

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