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天声人語

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2009年10月21日(水)付

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 手元の辞書には載っていないが、「追われ心」という語があるのを最近知った。いつも何かに追われるように先を急ぐ気分を言うそうだ。以来、日々のせかせかに、ふと気づいては頭をたたく▼さて、発足から1カ月を過ぎた鳩山内閣に「追われ心」はないか。そんな類(たぐい)の声を、このところよく聞く。荷車は最初に動かすときに一番力がいる。止まってしまえば後ずさりもする。それは承知しながらの、「マニフェスト至上主義」への懸念だろう▼賛否の割れている公約もある。高速道路の無料化は代表格だ。農家への戸別補償も異見は多い。決めたことへの邁進(まいしん)は、決めたときに視野になかったものは最後まで目に入らない危うさをはらむ。臨機応変を欠いた至上主義は、毅然(きぜん)として見えて、その実もろい▼来年度予算の概算要求は過去最高に膨らんだ。新規の国債は、これまた最高の50兆円に届くとの報道もある。地方を合わせた借金はすでに800兆円を超える。数字は国民の前にぶら下がり不安をかき鳴らす▼かつて漫画家の滝田ゆうが「その暖簾(のれん)をくぐるには、なぜか一応の怯(ひる)みがあった」と書いていた。質屋の暖簾のことだ。似たような「怯み」を巨額予算に感じる人もいるのではないか。まして質草は、子や孫の世代の暮らしである▼それにしても、こうも注目された概算要求はかつてなかった。多くの人が予算づくりに一家言持つようになったとすれば民主党政治のお手柄だろう。だがその批評眼にかなうのが、借金だのみの公約履行かどうかは、疑問なしとしない。

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