教育への日本の公的支出は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最低レベルだ。それでも高い教育水準は家計が支えているから維持されている。もはや限界であり、公的負担を増やすしかない。
OECDによると、日本は二〇〇六年国内総生産(GDP)に占める教育費のうち、国や自治体が支出した公的割合が3・3%だった。比較可能な二十八カ国のうちで下から二番目だから、不名誉な数字といえる。
財務省は「日本は少子化が進んで人口に占める子供の割合が低いため、子供一人当たりの教育支出は少なくない」と反論する。たしかに、一人当たりでは日本は八千八百七十二ドルとOECD平均の八千八百五十七ドルを少し上回る。
しかし、これは公私合わせた額だ。家計や企業などが負担した私費割合は33・3%で加盟国平均の二倍超。とりわけ、家計割合は21・8%と韓国に次いで大きい。
日本は大学進学率が高く、学習到達度調査も上位にある。高い教育水準は家計によって支えられてきたといっても過言ではない。
民主党は政権公約で「教育予算のGDP比5%以上」との目標を掲げ、来年度予算の概算要求には「高校授業料の実質無償化」などが盛り込まれた。公的支出を増やさなければならないが、財政状況が切迫している以上、どの施策に重点配分するかは吟味が要る。
OECD調査では、日本の教育支出のうち私費負担は就学前教育で六割近く、高等(大学)教育で七割近くを占める。調査を受けてOECDは「日本は大学の授業料が高いが、奨学金などを受ける学生の割合が低い」と指摘する。
高等教育への公的支出はGDP比0・5%と加盟国平均の半分しかない。能力と意欲がありながら経済的理由で大学へ行けなかったり、中退する学生がいる。
有能な人材を育てられないのは社会全体の損失につながる。経済的に困窮している大学生への奨学金拡充は喫緊の課題だ。
義務教育の学級規模をみれば、日本は小学校が二八・二人(加盟国平均二一・四人)、中学校が三三・二人(同二三・九人)という数字がある。OECDは「教員一人当たりの学級規模が大きく、これで教育支出が抑えられている」と分析している。
日本の教員は受け持つ授業時間は短いが、勤務時間は長いというデータもある。現場にしわ寄せが及んでいるとすれば、教員増も急ぐべき施策の一つだ。
この記事を印刷する