鳩山政権の新政府税調が本格始動した。「公平・透明・納得」が首相のキーワードだ。税制は国の根幹であり国民が安心する制度設計が欠かせない。将来の税負担の在り方も積極的に語ってほしい。
政府税制調査会の機能や手順を根っこから改める。政策決定の一元化が鳩山政権の旗印だ。
自公政権の政府税調は学者らで構成され、税のあるべき姿を描いて首相に答申する役割にとどまった。制度改正を実質差配してきたのは自民党税調であり、少数の議員が業界などからの要望を調整し決めてきた。
民主党はこれを権力の二重構造と批判し、新税調を政府・与党の政策一元化の象徴として衣替えさせた。藤井裕久財務相を会長に原口一博総務相や各府省副大臣らで構成され、会合はインターネット上でも生中継される。審議経過をさらし国民の納得を得る手法だ。形ばかりに終わらせず納税者の期待に十二分に応えてもらいたい。
その試金石は、さまざまな政策目的で例外的に設けられた三百項目に上る租税特別措置の見直しだ。研究開発などを減税で後押しし、奏功した施策もあるが、目的を達成したのに業界の既得権益として存続する事例も目につく。
鳩山政権は白紙に戻し財源を捻出(ねんしゅつ)する算段だが、無駄の排除と減税による支援をどう見分けるか。既に税調関係者に個別に接近する業界も出てきた。水面下の動きを封じねば国民に疑念が生じかねない。透明な調整を求めたい。
二〇一〇年度からの子ども手当は所得税の扶養控除廃止などで財源確保するが、子どものいない世帯は増税となる。減り続ける子どもたちを社会全体で育てていく。それをどう納得してもらうか。
新たに検討する「給付つき税額控除」も納税者番号制度の導入が不可欠とされる。納税額の少ない低所得者に現金を支給する税額控除は不正が生じぬよう所得の捕捉が欠かせないが、国による個人情報の把握を懸念する声も根強い。
税収は年四十兆円程度にとどまる。倍以上の規模の予算を借金して組まざるを得ない財政に不安を抱く国民は少なくない。鳩山政権は向こう四年間、消費税率引き上げを封印したが、高齢化が進み福祉予算の急増は避け難い。
消費税ばかりでなく、税負担全般について率直に語らなければならない。新たな国民負担の実現は政権の信頼こそが必須の条件だ。
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