グローバル化が進む世界の中で、政治リーダーはどんな立ち位置を取ればいいのだろうか。政治学者の姜尚中・東大教授は近著で、今年八月に亡くなった韓国の金大中元大統領の「半歩前」という言葉を紹介している▼要約すれば、リーダーとして成功するには、国民より「半歩前」に行くことがポイントだ。二歩、三歩と先に行けば、国民と握っている手が離れてしまう(『リーダーは半歩前を歩け−金大中というヒント』)▼新政権が誕生して一カ月。民主党政権のリーダーたちは試練の時を迎えている。注目されていた二〇一〇年度予算の概算要求額は、九十五兆円を超える過去最大の規模になった▼それに加えて、税収の見通しは当初予測の四十六兆円を大幅に下回り、四十兆円割れの可能性も。赤字国債の増発はしないという公約も大きく揺らぐ▼今後は、行政刷新会議が「事業仕分け」と呼ばれる手法で不要不急な事業を洗い出すが、子ども手当や高速道路の無料化などのマニフェストを実現させるための財源確保への不安は解消されない▼姜教授が気になるのは、マニフェストに縛られすぎているのか、あれもこれもと一挙にテーマを進めようとする性急さだという。「脱官僚依存」の政権の姿勢への支持は高いが、功を焦るばかりに、国民とつないだ手を離してしまえば、しっぺ返しされるのも早いだろう。