米企業の2009年7〜9月期決算発表が始まった。すでに発表を終えた大手企業は金融を中心に事前の予想を上回る回復を示し、ダウ工業株30種平均が約1年ぶりに1万ドル台を回復する原動力になった。
米株高に伴い日経平均株価も1万円台を上回って推移している。今後も日米の株高が続くかどうかは、アジアを中心にした新興国の経済がカギを握っている。
米国の大手金融は、国際的な企業買収の助言や有価証券の売買など、証券業務が好調だった。半面で米国内の失業や企業破綻が増えたため、個人と企業向けの融資で貸倒引当金を増やす動きが目を引いた。
証券業務に特化するゴールドマン・サックスの純利益は、前年の約3.8倍に膨らんだ。総合金融のJPモルガン・チェースは証券業の純利益が2.2倍に増え、対照的に小口金融の純利益は、9割近く減った。融資全体では焦げつきに備えて積む貸倒引当金の計上が前年から約4割増え、今後も不良債権の処理が収益を圧迫する見通しが強まった。
大手金融の決算から読み取れる米経済の先行きは、株価の上昇が示唆するほど明るくはあるまい。米連邦準備理事会(FRB)のタルーロ理事は14日に上院銀行委員会の証言で、雇用の悪化などを理由に「銀行システムは依然として、もろい」と市場の楽観論にクギを刺した。
雇用の悪化に歯止めがかからないのは、企業が採用や投資を控えることで利益を出そうとしているからだ。過去最高益だったグーグルも9月末の従業員数は1万9665人と1年前に比べ2%強減らした。
もろさを抱える米経済と対照的に、アジアを中心とする新興国が企業収益を底上げする事例も増えた。
ジョンソン・エンド・ジョンソンは米国部門が8%の減収だったが、アジア太平洋・アフリカ部門は5%増収だった。今後もドル安・新興国通貨高で収益の上振れが続きそうなこともあり、年間の利益予想を上方修正した。
新興国で稼いだ米企業が自国の雇用や投資を拡大するのはいつか。内需の弱さを輸出で補わざるを得ない日本企業の業績を予想するうえでも、欠かせない視点となる。